わたくしとあなた、生まれたときは別々でしたから、死ぬときは一緒が良うございます。
嗚呼なんてロマンチック…(恍惚)! ←ばーか!




☆★ エンドオブザワールド ★☆


一、若菜結人
(若菜結人の家に真田一馬が泊りに来ていました)

☆★☆★
 ソファーで横になってる一馬が、眠れないのか何度も寝返りを打つものだから、気に掛かって寝付けない。声を掛けるのは止しておこうと思ったけれど、ほんとに寝返り打ちまくりなんだもんなあ。気になって気になって。「眠れねーの?」と訊いてみると、
「ん」
 短い肯定の返事が返って来る。
「一緒に寝てやろっか?」
 からかい気味に言ってやった。ほんの冗談だった。そしたら一馬の奴、のっそり起き上がって、枕持ってベッドに来るんだもん。ちょっと焦った。多少の動揺を押し殺しながら、体を奥に詰めて一馬の入るスペースを作ってやる。
「はいどーぞ、一人じゃ眠れないお子様一馬くん」
 布団を捲ると、一馬は無言で隣りにするりと入ってきて、背中を向けて横になる。
 すぐ隣りにいる一馬の気配を意識せずにはいられなくて妙にドキドキした。でもそれは変な意味での意識じゃなくて。ただ、さっきまでずっと一人で横になってた場所に他人の体温が加わって、気持ち悪いような、でもちょっと嬉しいような、何とも言えない感じで、なんとなく落ち着かない。環境の変化に対するちょっとした興奮に過ぎない。その程度のものだから五分もすればすぐ冷める。一馬の気配に緊張してたけど、一旦緊張が解けてしまえば何てことない。むしろ隣りに気の置けない友人が眠ってるという事実はすごく安心する類のことで、しばらくするとどっと眠気が襲ってきた。
「もしも、」
 人がせっかく眠りに落ちていこうとしてるとこで一馬が唐突に口を開くものだから、うとうとした状態から一気に引っ張り出された。このやろ。
「なんだよ」
 自然と不機嫌な声色になってしまう。しかし、一馬は怯む様子なく、

「もしも明日世界が終わちゃうとしたら、結人はどうする?」

「はあ?」
 いきなり何を言ってんだコイツは。
「世界が終わる前までにこれだけはやっておきたいって思うことは何?」
「なんなんだよ、一体」
「いいから答えて」
 一馬の声は気持ち悪いくらいに真剣で、絶対に何か答えなきゃいけないような、根拠の無い変な義務感みたいなものが湧き上がってくる。
「…なんだろな。うーん、とりあえず美味いもん腹いっぱい食っときたいなあ。肉とか。蟹とか。あーあと一回銀行強盗やってみたかったんだよな。明日世界が終わっちゃうんだったらやっとこうかなハハハ」
 俺なりに真面目に答えたつもりだった。
 のに。
「結人に聞いた俺が馬鹿だった。おやすみ」
 なんだと!
「ちょっと待て。俺だけに答えさせるなんてずるくない? お前も答えてから寝ろ」

「俺は、」
 そのまま一馬が止まる。
 俺はイライラしてくる。
「早く言えよ」
 答えを急かす。

 一馬は深呼吸を一つしてから、

「俺は、告白、かな」

 一馬がそう言った瞬間、頭の中に英士の顔が思い浮かんだ。
 続いて、一馬が英士に告白してるシーンが浮かび上がる。


 冬の公園。雪が降ってる。一馬は身動き取れないくらいに厚着して着膨れてる。英士は一馬がクリスマスにプレゼントしたクリーム色のマフラーをしてる(俺は英士があのマフラーをしてるのを見る度なんだかくすぐったいようなこっ恥ずかしい気持ちになる。でも英士はあのマフラーばっかりしてる。愛って恥ずかしい。でもついからかってやりたくなるくらいそのマフラーは英士に似合ってた。一馬が選んで一馬が英士にあげたマフラーは英士の体の一部みたくしっくりと英士に似合ってた。ああ愛って恥ずかしい)。

「ずっとずっと好きだった人に、自分の気持ちを伝えておきたい」

 一馬が口を開く。英士に『すきです』と言う。耳まで真っ赤にして言う。英士はちょっと驚いた顔してる。一馬はもう一度『すきです』と言う。英士も耳まで真っ赤になる。雪が止んだ。

「世界が終わっちゃう前に、伝えたい」

『俺もだよ』と言おうとして英士が口を開く。一瞬にして空が真っ暗になる。次の瞬間、空の一点が痛いくらいに閃いて、閃きは瞬く間に空一面に広がり、夕方だというのに辺りは真夏の真昼みたいに明るくなる。大気がビリビリと唸り出す。地面がグラグラと震え出す。焼けるような匂いが鼻をつく。粘り気のある何かが体中に貼り付く感じがして手袋を脱いで顔を触ると、皮膚がただれているのが分かる。手に付着した血液。目の前の愛する人に視線を移す。酷くただれてゆく愛する人。訳の分からないまま愛する人に手を伸ばす。爆音。世界が終わる。

 英士には彼女がいて、英士の彼女はちょっと一馬に似てる(全くの俺の主観だけど)。いつもそう、英士が可愛いっていう子はいつだって、どこかしら一馬に似てる。または一馬と全く似てない、正反対のタイプだ。とにかく、英士の彼女は一馬を思わせる。いつだって一馬の影がある。一馬の匂いがする。勘違い? 考え過ぎ? そうかもしれない。でも、一旦そう思い始めたらもう駄目で、確信しちゃって。なんだか気持ち悪いっていうか訳分からないっていうか、とにかくイライラした。英士は気付いてないのかな? いや、気付いてるけど素知らぬ振りをしてるに違いねえ。一馬はそのへんのことは全然分かってない。たぶん説明しても分からない。馬鹿だから。英士はもっと馬鹿だけど。馬鹿同士似合ってると思う。好き合ってるのは見え見えだ。だったら迷わずくっついちゃえばいいのに。なのにくっつかない。お互い死ぬほど意識し合ってるのが見ててすごい分かるから、本当にイライラするし気になる。でもそこまで口出しするのもなんだし、や、かなり口出しすることもあるけど、でも最近はなるべくしないようにしてる。下手に口出すとさらにイライラするってことに気付いたから。ああなんでこいつらってこうなんだろ。鬱陶しい。実に鬱陶しい。

「そんなに好きな奴がいるんなら、さっさと告白すりゃいいじゃん。明日にでも」
「それは出来ない」
「なんで」

「だって、明日、世界は終わらないし」

 そんなの分かんないだろ。世の中何が起こるかなんて分かんない。今夜眠って、朝になっても目が覚めないかもしれない。何か偶然の不幸によって寝てる間に死んじゃうかもしれないのだ。そういう確率はゼロじゃない。一馬の身にも英士の身にも誰の身にだって勿論俺の身にだって起こり得ることで、そういうこと一馬は分かんないんだろうか。だから言うべきことはさっさと言っておいた方がいい。しかも奴の告白の勝算は九割九部九厘だ。残りの一厘は偶然の不幸。そんな一厘のせいでためらってる場合か。言え。言ってしまえ。好きですと言え。その一言で充分。全て伝わる。全て上手くいく。賭けてもいい(500円くらいなら)。言え!
 とか思ったけど口にはしなかった。多分一馬は『だって…』とか頼りなく言い返すに違いない。そしたらまた俺は苛立つことになるのだ。

「世界が終わる直前に告白したって仕方なくない?」
 どうせ告白するんなら世界の終わりよりも世界の始まりの方がずっといい。
「もう寝るぜ? お前もいい加減寝れば? おやすみ!」
 一方的に言って目を閉じる。良くない夢を見そうな気がした。
「おやすみ」
 小さな返事が返ってくる。
 一馬はずっと背中を向けたまんまだから、世界の終わりがどうなんて話しながら奴がどんな表情をしてたのか全然分からない。



ニ、郭英士
(郭英士は若菜結人の家に遊びに来ていました)

☆★☆★
「もし明日世界が終わるとしたら、何かこれだけはやっておきたいとか思うことってある?」
 なんていう結人のいきなりの質問に、驚きを感じずにはいられない。一体なんなんだ。さっきまで話題はサッカーのことだったのに。一体。俺はいつも冷静を装っているものの、意外なくらい突然の出来事には弱くて、思わず吃りそうになってしまった。
 いきなり何だよ、と聞き返したい気持ちを抑えつつ、ぐるぐると思考を巡らしながら、
「うーん、特に無いね」
 とりあえず落ち着いた声で答えてみた。(単に咄嗟には答えが思い付かないだけなんだけど)
「えっ、無い? 何も?」
「うん、無い」
 だから咄嗟には思い付かないんだってば。
「俺はたぶん、何もしない。別に普段通りに過ごすよ、たぶん」
 もうかなり適当に答えてるし。
「ふうん」
 興味無さそうな結人。
 悪かったね、面白いこと言えなくて。俺も結人の答えには興味無いから『お前は?』なんて返さないけど。だって結人の答えってなんか予想つきそうなんだもん。(どうせ食べ物がどうとか夢の無いこと言うんだよきっと)
 あ、今、ちょっと思い浮かんできた。案が。世界が終わる前に何をすべきかという案が、今。
「絶対にしておきたいことっていうのは無いけど、でも、出来れば、」
 前言を取り繕うような形で前置きをする。
「出来れば?」
 結人はやはり大して興味無さそうな様子で先を促す。
「出来れば、世界が終わるその瞬間には、すぐ側に好きな人が居てくれればいいな」
 うん、これだ。夢があるなあ、俺って。ありきたりだけど、いいじゃないか、こういうの。
「ふ〜ん」
 結人はどうでもよさそうに相槌を打った。結人め。俺がいいこと言ってるというのに何だそのどこか呆れた表情は。
「さらに、出来れば、の話だけど」
「まだあんの?」
「うん。手を繋いで終わりを迎えられたらいいな、好きな人と。出来れば、の話だけど」
 俺って夢が(以下略)
「あっそう。お前最初は『特に無い』とか言っときながら結構望んでるじゃん。呆れた。しかもクサイし」
 臭い?
「だって、手、繋いだことないんだよ、俺。好きな人と手を繋いだこともないんだ。なのに死んじゃうなんて」
「お前彼女と手も繋いだことねーの?」
 えっ、彼女? 思いも寄らない単語が出てきて息を呑む。つまり俺がさっきまで思い浮かべていた人物は彼女ではなかったわけだ。
 試すような結人の目。何もかも見通してる上で、俺を試したり動揺させるのが目的でわざとああいう言い方をしたんだ。
 負ける。これは負ける。こいつは強いし頭が良い。
「それとこれとはまた話が別」
 我ながら苦しい言い逃れだ。
「うわー、それってどういうこと? 別に今の彼女のこと好きじゃないって意味? 他に好きな奴いるんだ? あっ、そいつが誰だか当ててやろっか、」
 続けて結人がその名前を口にしようとした瞬間、俺はきつい口調で、
「分かったから!」
 何が分かってるんだか自分でも分からないけど、今この瞬間、彼の名前を出されるのはなんとなく嫌だった。
「自分の好きな人くらい自分で分かってるからわざわざ言ってもらわなくても結構。で、結人が俺の好きな人が誰だか分かってることもちゃんと分かってるよ。だから当てなくていい。当たってるから。言わなくていい。言うな」
 敗北だ。完全なる敗北。結人には敵わない。

「ま、美しい話ではあるけどな」
 唐突な結人の言葉。話がどんなふうに飛躍したのか分からずに戸惑った。
「美しいって何が?」
「だから〜、英士が世界終わる前にやっときたいこと。手を繋いで一緒に最期を迎える、か。なんとまあ美しいお話かしら。…って今言ったことは全部皮肉だけどな」
 最後の一文は余計だよ、結人。

「もし、手を繋げるんなら、世界の終わりも捨てたもんじゃないな」

 開き直ってそう言うと、結人はあからさまに呆れた顔をして、
「けっ。あ〜あ。一馬も英士もロマンチックだな〜。あー歯が浮く」
「…一馬にも聞いたの?」
「ていうか、奴が言い出した」
「一馬が?」
「そう」
「なんのために」
「知るかよ」
「で、一馬は何て?」
「本人に聞けよ」
「なんだよ、言ってくれてもいいだろ」
「嫌だね。本人に聞け」

 …結人のケチ!



三、真田一馬
(真田一馬は郭英士と並んで歩いていました)

☆★☆★
 “明日世界が終わるなら・・・”
 そんな話を英士が持ち出して、俺は少しだけ驚いたけど、すぐに思い当たって、
「ああ、結人から聞いたんだ?」
「うん」
「そっか。英士は? どうする? もしも明日世界が終わっちゃうなら」
「何もしない」
 淡々とした英士の口調。
「そう」
「うん」
「英士らしいな」
「そう?」
「うん」

 そう。どこがどういうふうに英士らしいのかは分からないけど、なんとなく英士らしい気がする。
もうすぐ世界が終わるって分かってるのに、何もしない英士。空を見上げる英士。あとニ、三時間後には世界が終わるな、なんてことが、空の様子からなんとなく予測できる英士。でも何もしない英士。すごく英士らしい気がした。英士って悪足掻きしなさそう。みっともない真似しないっぽい。俺は、悪く足掻いて、みっともないくらい足掻いて、でも結局は駄目で。そういう感じで終わりそう。

「一馬は?」
「あれ? 結人から聞かなかった?」
 これは意外だ。結人なら絶対面白可笑しく脚色して英士に言ってると思ってたのに。
「本人に聞けって言われた」
「そっか」
「で? 一馬は?」
 英士はなんだか答えを聞きたくって仕方がないみたいにソワソワしてる。ちょっと意外だった。『一馬は?』って聞いたのは、話の流れ上一応俺にも聞いとくか、みたいなノリだと思ってたから、こんなふうに答えを待ってる英士を見ると、どこか不思議な気持ちになってくる。
「秘密」
 そう言ってやったら、英士は目を丸くした。
「結人には言ったのに? 俺には秘密?」
 さも不平等だと言わんばかりの責めるような口調の英士。
 あ、なんか面白い。自分が優位に立ってるみたいな感じ。
「うん。英士には秘密。絶対秘密」
 調子に乗ってしまうじゃないか。
「なんで?」
「それも秘密」
「酷いなあ」
 英士は不満を隠そうとせず、あからさまに不愉快そうな表情をした。いつもよりずっと子供っぽい。なんだか嬉しくなった。英士も可愛いとこあるなあとか思ったりして。胸の中があったかくなる感じ。
「俺ってもしかして一馬に嫌われてる?」
 あっ、英士、素で言ってるよ。面白い。そんな訳ねーだろ、って笑いながら突っ込むとこだけど、ちょっとした悪戯心が芽生えちゃって、
「うん、そうかも。俺、英士のこと嫌いなのかも」
「………」
 あっ、英士、黙り込んじゃった。えっそんな、冗談なのに! 思いっきり冗談なのに! 普通冗談って分かるだろ?? そこで黙るなよ。焦るなあ、も〜。
「嘘だよっ、嘘に決まってるだろ。はい、これ、やるから!」
 コートの右ポケットからカイロを取り出して英士に差し出した。
 これでさっきの許せ英士。
「え…?」
 英士はどこか間の抜けた顔をしていた。
 も〜。
「だから、あげるって言ってんだよ」
「でも、一馬はいいの? カイロ」
 俺はコートの左ポケットからカイロを取り出してみせた。
「ニ個持ってるから」
「ニ個も…」
「うん。だから一個あげる」

 間があった。
 間が。
 どれくらいの間だったか。
 俺が不安を感じ始める手前かそれくらいの微妙な間だった。

「いらない」
 と、英士が言った。
 せっかくの好意を裏切られた気がして、胸が苦しくなった。英士もさっき、俺が『英士のこと嫌いかも』って言っちゃったとき、こんな気持ちになったのかな。悪いこと言ってしまった。だからバチが当たった。バチが、当たっちゃったんだ。どうしよう。俺は俯いて、黙ったまんまカイロをポケットに戻す。居たたまれない気持ちだった。
「手を繋ぎたい」
 英士のその言葉で、弾かれたみたいに顔を上げる。
「え?」
「一馬の手、あったかそうだから」
 英士の表情から気持ちを読み取るのはとても難しい。
「俺の手よりカイロの方がずっとあったかいよ」
「でも手を繋ぎたい」
「分かった」
 そろそろと右手を英士に差し出す。
「手袋脱いで」
「なんで?」
「なんでも」
 言い返そうとも思ったけど、素直に手袋を脱いで手を差し出した。すぐに英士の左手が絡む。すごく冷たい手だった。英士、手袋してなかったから。
 ドキドキして、俯いてしまう。俯いて歩いてたら危ないけど、でも今は平気だ。英士と手を繋いでるから、何も危ないことなんかない。何かあっても平気。何があっても平気。
 こっそりと英士の様子を窺ってみた。英士の涼やかな横顔。英士の首に巻き付いたクリーム色のマフラー。(俺がクリスマスに英士にあげたものだった。英士がこのマフラーをしてるのを見る度どこか気恥ずかしいような思いでいっぱいになるけど、すごく嬉しい。自分があげたものだからこんなこと言うのもアレなんだけど、このマフラーはほんとに英士に似合ってると思う。俺の目に狂いはなかった、とか思う。…は、恥ずかしい)

 今なら、言える気がした。
 今なら好きって言える気がした。いや、気がしただけなんだけど。実際は言えないんだけど。言えないんだけど、言える気がした。
 今なら世界が終わってもいい気がした。
 いや、気がしただけで、実際終わられたら困るんだけど。
 でも、そんな気持ちになったんだ。



四、再び若菜結人
(若菜結人は郭英士の家に遊びに来ていました)

☆★☆★
「手、繋いだよ」
 思いっきり平静を装いながらもどこか溢れ出る喜びを隠せないような英士の口調。『誰と?』って突っ込んで困らせてやろうと思ったけど、可哀相なのでやめといた。アー俺って優しい俺って良い奴(誰も言ってくれないから自分で言っとこう)
「おー、両思いになったか、ついに」
「いや、別にそういうんじゃなくて。『手を繋ぎたい』って言ってみたら、繋いでもらえただけ」
「そんなこと言えるくらいなら『好き』って言え。『つきあおう』って言え。お前はアホか」
 アホだなあ。ほんとにアホだ。『好き』っていうより『手を繋ぎたい』って言う方が恥ずかしいような気もするんですけど。そんなこと言えるくらいなら告白出来るだろうが、とか思うんですけど。

「ちょっと聞きたいんだけどさ、一馬の答えって何だったの?」
「何が?」
「ほら、明日世界が終わるなら、ってやつ」
「ああ、あれな。本人から聞かなかったのか?」
「聞いたよ。でも教えてくれなかった。俺には秘密なんだって」
「ふうん」
「だから結人、教えて。一馬は何て?」
「一回銀行強盗してみたいって言ってた」
「それは嘘だ」
「嘘じゃねーよ」
「嘘だって絶対。それは結人がしたいことだろ?」
「うっ」
 英士め、鋭い読みだ。
「一馬の答えロマンチックだって言ってたじゃない。それ全然ロマンチックじゃない」
「あーもー秘密だよ秘密」
「なんで」
「一馬が英士には秘密って言ってんだから秘密!」
 英士はこの上なく不機嫌そうな顔になった。けっ。ざまあみろ。

 これからも当分こういうイライラする状況が続くんだろうな。あーあ。いや、いいんだけどネ…。まあ、なんだかんだいっても平和だね、こういうのはさ。でもこういう平和だっていつ終わるか分かんない。明日や明後日にはほんとに世界の最期が来るかもしれない。でも今この瞬間は平和だ。うん、まあ、それでよしとしよう。 それに世界の終わりが来ても、愛は地球を救うというから、もしかしたら愛で世界は救われちゃうかもしれない。よし、もー、ほんとお前らさっさとくっつけよ。そんで英士と一馬でガツガツ愛を育むがいい。そして世界を救え。救うがいい。 あはははは。オモロ。

★☆★☆




☆★☆おしまい☆★☆



Jan.28,2001


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