この身を削って貴方への愛を貫いてるのよ。
ちょっとくらい労ってくれてもいいんじゃない?
●●●●●●●●●マイスイートダーリン●●●●●●●●●
「なー、一馬、女の子紹介してやろっか?」 「何言ってんの、お前」 「だから〜、女の子紹介してあげようかって言ってんの」 「なんでそんなこと言うんだよ、いきなり」 「彼女欲しくねーの?」 「ていうか、お前に彼女の心配までされたくない」 「もしかして彼女いる?」 「いないよ」 「じゃ、好きな人は?」 「…………いない」 「何!? 今の間は何!?」 好きな人いるんだろ? 言えよ! って一馬を問い詰めると、一馬は真っ赤になって黙り込んでしまった。 「お前の好きな人ってさ、もしかして英士?」 俺の問いに、一馬の頬は一気に赤さを失った。一馬は何のことだかさっぱり分からないというように目を丸くして、「はあ?」と疑問の声を発する。そんな一馬の反応に、俺はホッと一安心。 「違うんならいいや。今の忘れて」 「?」 なんとなく腑に落ちない様子の一馬に、俺は再び、「好きな人って誰だよ」と質問を浴びせかける。しつこくしつこくしつこくしつこく問い詰めると、一馬はやっと諦めたように打ち明けた。 「隣りのクラスの子だよっ。悪いかっ」 わーこいつ真っ赤になってやがるよ。わーわー。恋する男子だ。わー。 「や、悪くないよ。結構なことで。で、どんな子? 可愛い? お前、今その子とどんな感じ?」 「結人には関係ねー」 なんて薄情な。友達甲斐のないやつめ。 「その子の名前は?」 「名前なんか言ったって仕方ねーだろ。結人の全然知らない子なんだから」 「いいじゃん。言えよ」 「……イニシャルくらいなら……」 おいおい。イニシャル? くだんねー。 「ははは。じゃ、イニシャルでもいいよ」 「E.K」 えっ!? イーケー!? 「かくえいし!?」 「はあ!? 何言ってんだよ! 隣りのクラスの子って言ってんだろ! 川原英理子だよ! …あっ!」 「あっ、そーなんだ。ふうん。なるほど。エリコちゃんね、エリコちゃん」 「気安く名前で呼ぶな!」 あらら。もう。本気で怒ってるし。 まー、一馬くんが恋してときめいてらっしゃるようで良かった良かった。一馬、輝いてるね! 結構なことです。一馬とエリコちゃんが上手くいきますよ〜に★ それにしても一馬が英士のことをアレな意味で好きなわけじゃなくて良かった〜。や、俺は、一馬と英士をめぐって争うことになっても、勝つ自信はあるよ? もう圧勝だよ、圧勝。一馬ごとき敵じゃないって。でもなー、ちょっと後味悪そーだもんな。一馬デリケートだし? 失恋したらなかなか立ち直れそうにないじゃん。そうなったらなあ、色々となあ。というわけ。だからさ、良かった。良かったよ。一馬と英士を争うはめにならなくて良かった。ははは。 ・・・・・・ 俺と英士は、英士んちで一緒に冬休みの宿題をやってた。英士は宿題に集中してて、俺のこと相手にしてくれない。俺は宿題なんかどーでもいい。英士に相手にしてほしー。 「一馬って、カワハラエリコが好きなんだって」 数学の問題集をやってる英士に、一昨日得た情報を早速話した。英士は顔も上げずに、手を動かすことも止めずに返答する。 「誰それ。芸能人?」 「や、一馬の隣りのクラスの子」 「ふうん」 「英士、嫉妬する?」 「誰に」 「カワハラエリコに」 「なんで」 「一馬に愛されてるから」 「馬鹿馬鹿しい」 英士は呆れたようにため息をついた。英士の神経は、机の上に広げてる数学の問題集にしか向かってない。俺の話なんかまともに聞いてくれないし。…ほんと、つまんねーなー。相手にしてほしーなー。 … 「英士、テレビつけていい?」 「宿題しなさい。」 … 「英士、なんかお腹空かない?」 「…さっき昼飯食べたばかりだろ。宿題しろってば」 … 「英士、hydeと大石恵って似合ってると思う?」 「分かった。もういい。結人が宿題しないのは結人の勝手だ。でも、俺の宿題の邪魔しないでくれる?」 … 「英士、」 「もう、お前ね、」 英士はシャーペンを置いて顔を上げる。 「ミカン剥いてあげよっか?」 英士の言葉を遮って、テーブルの上に置いてあるミカンの入ったカゴを指差しながら言うと、 「いらない」 英士は呆れたようにため息をついた後、また問題集に目線を落とす。 … 「英士〜、」 「結人、いいかげんに…」 「ほら、見て見て」 俺はカゴからミカンを三つ取って、お手玉するみたく、素早い手付きで順々にひょいひょいとミカンを投げ上げては受け取っていった。 見ろ! この俺の鮮やかな手さばきを! ミカン芸、すげーだろ。どうだ、英士。構え、英士、俺を構えよ! 英士はポカンとして俺を見つめながら、こう一言。 「…すごい…」 あ、そんなに普通に感心してもらえるとは。ちょっと意外。へっへー、と自信に満ちた笑いを浮かべながら、俺はミカンをカゴに戻した。 「すげーだろ?」 「器用だね」 「まいったか」 「いきなりだったから驚いたよ」 「英士、俺のこと構えよ」 「充分構ってると思うけど」 「英士は素っ気無さ過ぎ」 「そんなことはないでしょ」 「英士、俺、英士に愛されたい」 「………」 「俺ね、一馬の話聞きながら、カワハラエリコに嫉妬したよ。だって、愛されてるんだもん、カワハラエリコは。カワハラエリコの話してるときの一馬の顔って真っ赤でさー。ああ一馬ってほんとカワハラエリコのことが好きなんだろうなあ、ってすごい思った。いいよな、カワハラエリコは。愛されててさ。羨ましいよ。俺も愛されたい。英士に」 「結人、」 お? 愛してるよ、とでも言ってくれるのかな。(無理)(でも言え!)(言え〜!)←念 多少の期待に胸を膨らませる俺に、英士はこう。 「ミカン剥いて」 なにそれ〜。ガクー。 ミカン剥いてる(英士のために!)ときに、英士が言った。 「俺、何でも人に頼らず、自分のことは自分でしたいってタイプだから、誰かに何かを頼んだりするのって、例えば、誰かにミカン剥いてもらうとかね、そういうこと頼むのって苦手だし、性に合わない。でも、結人には頼めるよ。ねえ、結人、俺が何を言わんとしてるか分かる?」 「分かるよ。それが、さっきの“愛されたい”への答えなんだろ? ちぇっ、遠回しだなー英士は。俺は勘良いから通じるけどさ。そんな婉曲的な言い方されたらムズムズするよ、もー。もっと率直に言えんかね、こう、ストレートにさ。“愛してるよ、ダーリン”とかな」 ダーリンて。ラムちゃん?(自分で言っといて自分で突っ込む) 「言えるかバカ」 うわっ。バカって言われた! バカって! ひでー。この野郎〜とか思いつつも、英士の口元にミカン(白い筋もきちんと取った)を運ぶ。 「はい、アーン」 甘ったれた声で言ってやると、英士は意外なくらいあっさりと口を開いて俺の手からミカンをパクリ。 か、かわいい! 英士かわいい!(とか素で思ってる自分てかなりアホっぽい) 「おいちー?」 赤ちゃん言葉で聞いてやったら、 「おいちー」 赤ちゃん言葉で返ってきた。わはは。なんだよ、英士。可愛いヤツめ! 何気に可愛げあるんだよなあ。いつもは憎たらしいけどな。ははは。しかし英士が『おいちー』とか言うと死ぬほど不気味だな。コワ。俺が言うのは全然アリだけど! 俺は何しても許されるんだよ。そういう星の下に生まれてんの。いーだろ。ていうかさー、俺達って何気にラブ絶好調? わはは。 ・終わり・ |
Dec.23,2000
タイトルは、そうです、ヤイコです
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