君の生涯を僕にくれ! 決して損はさせないから! 絶対幸せにしてみせるから!
ユアマイオンリーシャイニングスター
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君は! 僕の! 唯一の! 輝ける! 星だ!!
そう、ついニ週間ほど前のこと、一馬にいきなり彼女ができて、俺はただただショックで、、えっそんな…! とか思ってたら、今日その彼女と別れることになったらしい。そのことを電話で聞いて、とりあえず俺は一馬の家に行った。ほんとは今日はクラスメイトと約束があったんだけど、そっちは急遽キャンセル。だって一馬落ち込んでるみたいだったし。一馬に、できればうちに来てほしいとか言われたし。仕方なかった。そう、俺は、なんていうか、弱いんだ、一馬に。弱いというか、むしろ、もう、言いなりというか。情けない話だけどね。惚れた方が負けとはまさに。どんなに一馬に好きだと言ったところで曖昧に流されたり逃げられたり。挙句に今回はいきなり女の子と付き合ったりするし。まいったね。で、その子に振られたら、俺に電話なんかしてきて。まいった。でも、やっぱり一馬の言いなりになって、素直に家まで行っちゃう俺って。 いや、まいった。 ニ週間前、一馬は一学年下の、学校は同じだけど全然知らない女の子に告白されてその場で返事を聞かせてほしいと言われ、その子の押しの強さにたじろいで思わずOKしてしまい付き合うことになったんだそうな。(一馬って押しに弱いね…)ところが今日いきなり彼女の方から別れを切り出されたんだそうな。(うわ早…) 「まあ、俺が悪いんだけどさ。付き合ってからも、サッカーとかお前や結人の方ばっか優先しちゃったし。だから全然構ってあげられなかったし。そのことで文句言われたけど、『仕方ないだろ』とか素っ気無く答えちゃったし」 「ふうん」 「俺が悪いんだ」 あ、もしかして『そんなことないよ』とか言ってほしいのかな。言ってほしいんだろうな。 「一馬だけが悪いわけじゃないでしょう」 「そうかな」 「そうだよ」 一馬はちょっと安心したみたいな表情になった。あ、なんかちょっと腹立つな、なんとなく。 「こんなこと訊くのもアレなんだけど」 「何?」 「どこまでいってたの? その子と」 そう、これが、どうしても気になってた。 「…………したよ」(ちょっとモジモジしつつ) 「えっ!?」 「早過ぎなのかな…」 「いや、それは、人によるだろうけど。したんだ…。そうなんだ…」 「彼女がしてっていうから」 「…! あ、ああ、そ、そう、そうなんだ、へええ…」 あああ、ちょっと動揺。いや、ほんとは、すごくすごくショックなんだけど(T_T)思わず顔文字 「あんまり大したもんじゃないんだな」 「……はあ」 「キスって」 「えっ!? キス?」 「何? キスの話じゃなかったのか?」 「えっ、ああ、いや、そっか、なんだ、ははは。ははははは」 「何笑ってんだよ」 「いや、なんでもない。いいよ、話続けて」 ああ、なんだ。ほっと一安心ヽ(^o^)丿思わず顔文字 「でも、はじめてのキスだったんだ。ドキドキした」 「はじめてのキスは俺とだろう」 「あ、あれは事故だろっ」 あれはそう、三ヶ月くらい前のこと。俺の家での出来事。なんとなく二人して写真とか見てて、で、一馬が俺の小学校時代の卒業アルバムが見たいって言い出した。アルバムは本棚の上に置いてあった。俺が取ろうとしたんだけど、一馬が『俺の方が背が高いから俺が取る』と言って(一馬の方が高いといってもほとんど変わらないのに)、一馬は背伸びして本棚の上に手を伸ばしたのはいいが、アルバムに手が届いた瞬間、バランスを崩して倒れそうになった。俺は急いで一馬を支えようとしたんだけど支えきれなくて、そのまま二人で倒れ込んでしまった。俺が一馬の上に乗るような形で倒れた。で、倒れたとき、口と口が合わさってしまった。唇同士どころか、歯もぶつけてしまって、すごく痛かった。でも俺にしてみれば、気恥ずかしいような甘ったるいような、なかなか素敵な思い出なわけなんだけど。(漫画みたいな思い出) 「ああ、あれね。事故じゃないよ。わざとだよ」 「な…! わざと!?」 「うん、わざと」 「な、な、わざとって…」 「一馬が倒れそうになったときは、そんなこと企んでなかったよ? あのときはただ、助けなきゃってそれだけで。でも、二人して倒れ込みそうになった瞬間に思ったんだ。状況からしてこの体勢だったら、倒れたときに上になるのは俺だから、これは多分いけるなって、どさくさに紛れて事故に見せかけてキスできるラッキーって思ったよ。で、そうしたの。状況が状況だったし咄嗟だったから、つい歯までぶつけちゃって痛かったけど。でもラッキーだったな、あれは。しかも一馬あれがはじめてだったって言うじゃないか。さらにラッキー、とか。ははは」 「笑い事じゃねーよ!」 「ごめんね。でももう時効でしょ」 怒って文句を言おうとする一馬の肩を強く引き寄せてそのまま抱き込んだ。一馬は突然のことに驚いて、時が止まってしまってるようだ。 「可哀相に」 言いながら、一馬の背中をさすった。可哀相に、というのは、三ヶ月前の他愛無い(?)出来事についての言葉じゃなくて、今回の出来事(一馬が彼女と別れたこと)についての慰めの言葉。 「な、ちょ、ちょっと、英士!」 やっと今の状況を理解した一馬が、途端に抵抗し始めて、俺の胸を押し返してくる。俺はもう絶対一馬を離すまいと、さらに強く抱き込んだ。 「悲しまないで」 深刻な調子で言うと、一馬は抵抗するのを止めた。 「別に、悲しんでるわけじゃない。だって、俺、彼女のことが好きだったかどうかも分かんないままで。だから、別に、」 そこで一馬は一旦話を中断して、その後小さく深呼吸をしてから再び口を開く。 「ただ自分って不甲斐ないなあって思うんだ。せっかく俺のこと好きって言ってくれる女の子がいて、付き合うことになって、でも、上手くいかなくて、俺が駄目で、大事にしてあげられなくて、愛想尽かされちゃって…。たった、ニ週間で。せめて、三ヶ月くらい待ってくれたら、お互いのこと、もっと、分かり合えたかもしれないのに。や、でも、俺が悪い。適当にOKしちゃって、でも、何も期待に応えられなかった。何も…」 一馬を抱きしめている腕を解いて、正面から向かい合う。一馬は涙目になってた。真っ直ぐ見つめると、一馬は俯いてしまう。下を向いたら涙が落ちてしまいそうで、なんだか心配になる。 「体育の授業でサッカーしてる俺がかっこ良く見えて一目惚れしたって、それ以来ずっと見てたって、すごく好きって、そう言ってくれたんだ」 「うん」 「でも、そのニ週間後には、俺のこと、もう好きじゃないって、 俺のこと、ひどいって、 俺のこと、冷たいって、 俺のこと、こんな人とは思わなかったって、 がっかりしたって、 がっかりさせちゃったんだ、 俺、嫌われちゃった」 途切れ途切れの一馬の言葉。声が震えてた。 俯く一馬の頬を両手で包んで顔を上げさせる。一馬の目からは、今にも涙が零れ落ちそうだった。目尻に唇を寄せて、水分を吸い取ってやる。額に左頬に右頬に鼻の頭にキスをして、最後に唇に。一馬の背中に手を回して、しっかりと抱きしめてしっかりと唇を合わせる。体を捩じらせて一馬が抵抗しようとした。でも強く抱き込んで、動きを封じ込めるように腕に力を込めると、一馬は俺の腕の中でおとなしくなった。一馬の体は小さく震えてた。そんな一馬がどうしようもないくらい可愛くて可哀相で愛しくて、どうにか温かく慰めてやりたくて、でも、この機に乗じてどうこうしてしまいたい気持ちもあって、けどさすがにそれはまずいな、なんて思えるくらいの冷静さはきちんとあって、でも、ドキドキして、どうしようもないくらい。 「息苦しい。いい加減離せよ」 俺は名残惜しくも抱きしめていた腕を解いて、一馬を解放してやった。俯いた一馬の顔を覗き込むと、頬が真っ赤に染まっててあまりにも可愛かったから、頬に口付けたくなったけど、そうしたら多分一馬はすごく怒って、下手したら殴られてしまう恐れがあるから止めといた。 「さっ、テ、テレビ見よっと」 一馬は照れ隠しみたいに言って、リモコンを手にしてテレビを点ける。リモコンを持つ手が震えてて、ああ無理してるんだなって思った。そういう一馬を愛しいと思う反面、どこか憎らしさも感じた。素直なのに素直じゃなくて、俺を頼るくせに頼りきらなくて、肝心なところでいつもはぐらかして逃げて、こっちがこんなに切実に好意を態度で示してるのに他の女の子と付き合うわ、付き合ったわいいが振られたら振られたで俺を呼び出して、泣いて…、って、いいよ、別に、それでも、いいけど、こっちの身にもなってみろよ、って気持ちが全然ないわけでもない。いや、いいんだけど。いいんだけど悪い。 彼の純粋さが、不器用さが、たどたどしさが、ずるさが、図々しさが、愛しくもあり、はがゆくもあり、憎らしくもある。 俺はリモコンを取って、テレビを消した。 「なんだよ。人がテレビ見てんのに」 むっとした声で一馬が反論する。 「別れたばかりのお前にこんなこと言うのもなんだけど。一馬、俺と付き合おう」 “結婚を前提に”って台詞も付け足そうと思ったけど、本気で怒らせてしまいそうなので止めといた。(一馬ってあんまり冗談通じないから) 「バーカ」 一馬は再度リモコンを取ってテレビを点ける。俺は黙ったまま、またテレビを消す。 「なんだよっ! 俺はテレビが見たいんだよ!」 俺の手からリモコンを取り上げようとする一馬の腕を掴んだ。 「離せよ!」 「嫌だね」 「俺はテレビが見たいんだ」 「俺は見たくない」 「俺は見たい!」 「じゃ、付き合おう。そしたらテレビ点けてもいいよ」 「何言ってんだアホか。それとこれとは全然関係ねーだろ」 「関係なかろうと関係あろうと、関係ない」 「訳分かんねー。ていうか大体、今そういうことを俺に言うのか? 人が別れたばっかりってときに! 俺は傷付いてんだぞ?」 「分かってるよ。だからこそ今言ってんの」 「付け込むみたいな真似するな」 「今付け込まないでいつ付け込むの」 「お前って嫌な奴だな!」 「嫌な奴はどっちだか。人の気持ちをもてあそんで」 「な、なんだよ、それ! もてあそんでなんか…!」 「とにかく今はテレビなんかどうでもいい、そうだろ?」 「よくねーよ、勝手に決めんな」 吐き捨てるような一馬の口調にかっとなった。 「真剣なんだ、こっちは」 言いながら、力任せに一馬の体を押し倒す。言い争いのせいで、完全に気持ちが高ぶってしまっていた。いつもは冷静で、自分の感情と言動をコントロールするのには自信があるけど、ふとした出来事で一旦気分が昂揚すると、どうにもならなくなってしまうときがたまにあって、今はそういうときなんだろうと思う。これはまずいな、なんて思っていても、そこで止めることができない。 「いってー! もう! 何すんだよ、バカ!」 押し倒されたときに後頭部を打ったらしい一馬は、小さく呻き声を上げた後大声で反論したが、そんなのお構い無しで一馬の上に覆い被さった。 「な、なんだよ、お前は! どけ! 死ね!」 一馬は必死になって両手で俺の体を押し返そうとした。 「さっきは大した抵抗もしないでおとなしくキスされて抱きしめられてたくせに。しかも泣いてたし」 「泣いてねーよ!」 かっとなって俺の頬を打とうとする一馬の手を払い、両腕を床に押し付けて思いきり体重をかける。これは体勢が悪過ぎて抵抗しても無駄だと悟ったのか、さっきまでの血気どこへやら、一馬は途端に怯えたような表情になった。 「い、痛いって! 英士、腕、痛い、重い、やめろって!」 自分の下でひたすらうろたえる一馬に対して、俺は罪悪感を抱くどころか、余計に気が昂ぶってきて、いっそ笑いすら込み上げてくるほどだった。今は完全に自分に分が有る。どう考えても優位だ。互いの意志が通わなかろうと、力に任せれば今すぐにでも一馬を抱ける。俺が望めばそうできる。絶対にできる。圧倒的な優越感。明確に抱きたいと思った。そして、『抱きたい』という欲望を支える『抱ける』という強い確信。今までずっと長い間我慢に我慢を重ねてきたのが馬鹿みたく思えた。いや、今までの我慢はこの瞬間のためにあったのかもしれない。そうまで思った。気分が昂揚する。脳が熱くて、でも脳の芯の部分はどこか冷たくて、頭痛がする。 「英士、待て! ちょっと待て! 落ち着け! 落ち着けって! は、話し合おう! 話せば分かる!」 無理矢理セーターを捲り上げようとする俺の手を掴んで、慌てた声で一馬が言った。一馬は完全に取り乱していた。そして、俺は一馬以上に完全に取り乱していた。そんなことは分かってる。でも、こうなってくると歯止めが利かない。裾を捲ったセーターから一馬の腹が少し見えて、その白さにくらくらした。鳥肌が立つ。これから自分が一馬にしようとしていることを想像するだけで目眩がする。脳の隅に追いやられた理性が制止を叫ぶ。でも止まれない。バットか何かで頭を思いきり殴られでもしない限り冷静さは取り戻せないだろう、 とか考えてたちょうどそのとき、 大きくて鈍い音がしたかと思うと、頭に激痛が走った。痛みの確認もほどほどに、意識が一気に遠くなっていくのを感じた。 ・・・☆ ・・・・・・・・・・・・ ☆お・し・ま・い☆ |
Jan.9,2001
タイトルはミポリンの曲です。
昔「ママはアイドル!」(ドラマ)が好きでした。
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