友よ、分かり合った日々は遥か遠い


回 想
≪2000年の夏を追って≫

ひたすら逆走 
停滞 そしてまた逆走







目を閉じると、そこは夏だった

二人の仲が一番濃密だった時期を容易に思い出す事ができる それは今年の夏 火事のような夏だった 病気のように白い太陽の下 熱に浮かされて確かめ合って高め合って深く関わった あのときの愛情及び愛情の反作用としての憎悪を思い返すだけで息が詰まる 呼吸する隙間がない 酸素がない 息苦しい恋だった



8月の真ん中 二人で海へ行った 君が僕を振り返って僕に微笑みかける 微笑みかけた? 
逆光 逆光 逆光 一瞬 発作のような目眩を感じて 視界が転がった さらに濃度を増す 目眩 眩暈 目舞い めまい めまい めまい そう めまいのような日々だった 僕等はいつ目眩から醒めたのか 目眩の日々 戻らぬ日々 決して帰らぬ 夏よ 遥か遠い 100年前にも感じるほどに







目を開けると、そこは冬だった

痛いほどに冷たい空気の中吐く息は白く指先は強くかじかんで冬のさなか僕は夏のさなかの出来事を追う 夏はいつ終わったんだろう 最後のセミが鳴くことを止めてしまった日はいつだった?





回想 会葬 夏 ひとしきりの感傷 改葬 掘り返すたび過去は甘苦しさを増して 記憶は
ノンフィクションからフィクション混じりのノンフィクションへそしてノンフィクション混じりのフィクションについには純然たるフィクションへと 移り変わりゆく記憶 立ち止まる僕 振り返ったまま立ち止まる僕 決して立ち止まらない彼 振り返りもしない彼 僕達はすれ違うことすらない もう立ってる場所が違うんだ 歩いてる道が違う 出会わない 出会えない 彼の影さえ見えない でも記憶の中の彼は全感覚を刺激するような存在感を保ち続けていて 幻影 脳の内側に心身の奥底にこびりついて離れない幻影


















『友よ』なんて呼びかけで始まっているけれど、これは単なる独り言に過ぎぬ。友よ、どうか気にしないでくれ。(って、また呼びかけてるし)















今日も僕は朝起きたときから目を閉じている。















Dec.28,2000

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