そう、食べ物の趣味というのはとても大事ですね。趣味が一致しないとどうしてもね。そうそう、ほらたとえば新作のお菓子が出たとするじゃないですか、明治とか森永とかそういう有名なとこから。CMには流行りの芸能人を使っててね、ああ、そう、CMは騒がしい感じなのが好ましいから人数が多いのがいい、KinkiよりはV6、プッチモニよりはタンポポ、いや、モー娘全員出動すればいいのか、まあ、とにかく騒がしいのがいいんですね、いや、そんなことはどうでもいいんですけどね。で、そうそう、その新作のお菓子のことが、つきあってまだ間もない初々しくも美しい恋人同士の会話の中でふと話題に上がったりするわけです。
「ねーねー、ほら、あの、今、モー娘が宣伝してるやつ、アレもう食べてみた?」
「あーアレね、うんうん、こないだ食べてみたよvvv」
「とっても美味しかったにゃ!」「真面目な話まずかったよ。口に入れた瞬間ペッと吐き出してしまったほどさ(怒)」←※同時です。
こうなってしまうとどことなく大変!どことなく気まずい雰囲気になってしまいますね!
というわけで食べ物の趣味が合うかどうかというのは大事なんですよ!
以上の話はほぼ本編に関係しないんですけどね。






信用ならぬ

プリン派
 本日最後の授業(数学)終了のチャイムがなるまであと五分。あー当たらなくて良かった〜★なんてホッとした途端に突然プリンが食べたくなった。プリン、プリンプリンプリン。一度思い出すと頭の中がプリンでいっぱいになる。甘苦いカラメルソースのかかった柔らかなプリンが舌の上でとろける、そんな想像をすると唾液が溜まる、舌が焼け付く、喉が鳴る。あ―――――プ―リ―ン――――――プ――リ――

「真田。この続きはどうなるかな」

 当 て ら れ た 〜 !?

 心臓が止まるかと思った。一瞬、頭の中が真っ白になる。それでもすぐにプリンへの欲望が戻って来る、いやいや、プリンどころじゃない、質問に答えなくては、と思いつつ黒板の数式を見つめる。“どうした?分からないのか?分からないのなら分からないと言え”先生の気持ちがその表情から手に取るように分かる、プリン、プリン、プリンが食べたい、いや、違う、質問に、答えなければいけない、えーと、あれとそれをかけてそれで移項してマイナスが無くなってうんうん、プリンが食べたいな。頭の中で答えが出てそれを口にしようとしたのだけど思わず“プリン!”と叫んでしまいそうになるのをぐっとこらえて“エックスイコールサン”と無事答えることの出来た自分を誉めてあげたい!プリン!

「…真田、途中の式もちゃんと言ってくれ」

 あ。



学校の帰り、プリンを買いに近くのコンビニへ。


 で、
 ふと気付くと手にチチヤスヨーグルトを握っていた。






ヨーグルト派
 ああ鳴ってるな、と思った。鞄の中で、携帯が。なんだろう、たまにない?鳴ってるんだけど、出るのがめんどくさいとき。あー出なきゃな、と思いつつ、手が動かない。ああ鳴ってるな、うん、鳴ってる、出るべきなんだろうな、うん、めんどくさいんだよな。ヤイコのルックバックアゲインが流れている。だきしめて〜いた〜い♪いたいいたいいた〜い♪メロディに合わせて歌ってみたりして。まだ鳴ってるし。うーん、なかなかしつこい。出よう。携帯を取り出して、ディスプレイに表示された名前を見て思わず心が弾んでしまった自分の可愛さよ!あーこんな可愛い自分が好きでたまらないよ!恋って素晴らしい!なんて★!ていうかいい加減に出ろ自分!なんて★!

 “ピ”「はいはいはい。なんだよ一馬。え?あはは、ごめんごめん。えっ、俺?今?読書してた、シェイクスピア読んでた。えっ、なんだよ、疑ってんなよ、ほんとだよ〜。嘘だけど!あはははは。あーさっき家着いたとこ、んで、ジュース飲んでた。え?今から?来んの?え〜、部屋散らかってるぜー。あははは、いつものことってゆうなよ、うんうん、分かった、うん、でも来るな!あははははは、嘘嘘、来たけりゃ来ればいーよ。うん、はいはい、うん、はーい。あーもーお前うるさい。もう切る。ん、そんじゃ後で」“ピ”

 どうやら今から一馬が来るらしい。ちょっとくらい部屋片付けておこうかな。いや、いつも散らかってるし、向こうもそのことは充分過ぎるほどに分かってるし、そもそも一馬に気なんか遣わないから部屋が散らかっててもいいんだけど、でも、なんだ、ものには限度というものがあって、今の部屋の状態はその限度というものを超えてい

 ピンポーン

 インターホンが鳴った。セールスかな?それとも姉ちゃんが帰って来たか、と思ってドアを開けてみたら。

「一馬!」

「よう」
「……ちょっと待て、お前さっき学校からかけてるって言わなかったか?」
「う、うん、言った気がする」
「気がするじゃない、確かに言った。こんなに早く着くわけねーだろ、っていうかさっき、つい一分前くらいに電話を切った覚えがあるんですけど?」
「え、うん。実はさっき、結人の家のすぐ近くからかけてた」
「じゃあなんでそう言わねーんだよ」
「なんだよ!なんでそんな怒ってんだよ、怖いよお前!ちょっと驚かしてみようとか思っただけじゃん!」
「ああもうくだらないユーモアを利かそうとすんのはよせ。うざいから」
「なんだその言い様は!おい!ため息をつくな!」
「言っとくけど部屋まじで散らかってるからな」
「だからそれはいつものことじゃん」
「いや、最近の散らかり具合はいつもの比じゃない。すごいよ?驚くよ?目が潰れるよ?いいのかい?」
「いいのかい、って言われても…。…なんか恐ろしくなってきた…」
「いや、別にいいんだけどな、別の部屋行けばいいだけだから。他に部屋空いてるし」
「それもそうだな」
「そうだよ」
「うん、でも見して?結人の部屋。とりあえず。そこまで言われたら気になって気になって一目見ないと気が済まねーよ」


 で、俺の部屋を見た一馬の感想はというと。

「…うわあ…」

「見なけりゃ良かったと思っただろ?」
「うん」

「ところでそれはなに?お土産?だったら出し惜しみしないでとっとと出して?」
一馬が手にぶらさげてるコンビニの袋を指差すと、今思い出したように一馬は袋の中に手を入れてヨーグルト取り出して見せた。
「ああ、忘れてた。はい、これ、結人に。チチヤスのだよ」
「なかなか気が利くな。好きだよ一馬」
「ほんとに?結人が好きなのは俺じゃなくてヨーグルトだと思うよ?」
「うん」
「よし、食べよう」
「俺の部屋以外の部屋でな」
「当たり前だ」


 俺がヨーグルトを食べてる間、一馬はゼリーを食べてた。ヨーグルトの方が美味しいのに〜。

「今日さー、なんかいきなりプリンが食べたくなって、それでプリンプリンプリンってプリンのことで頭がいっぱいになったんだよな。で、学校終わってすぐコンビニ寄ったんだ。でもなんか色々見てたらさ、プリンよりゼリーの方がいいかなーって。いきなり気が変わった」
 一馬はゼリーを食べながらそんなことを言った。
「…ふーん?」
「あーあと、ヨーグルト見たら結人を思い出したよ」
「だからいきなり来たわけ?」
「…うーーん、うん…、どうなんだろう?」
「愛だな〜」
「えっ!?いや、いやいや…、愛?いや、なんか、もっと、こう、なんだろう、結人=チチヤスヨーグルト、っていうふうに、こう、数式っていうか公式っていうか、そういう感じの結び付きで、つい、顔が思い浮かんだだけなんだけど」
「なーんだ、じゃーそれ愛じゃないな」
「…うーーん、うん…、どうなんだろう?」

 ……………
 なんか…、なんかこいつ信用ならねーな!

「一馬って…」
「何?」
「アホそうな顔してるな…」
「言いたいことはそれだけなのか?ていうかすごい素じゃん今、お前、素だ、素で言ってる、ひでー…」
「ゼリーを一生懸命に食べている一馬があまりにも頭弱そうで、つい……うわあっ!」

 一馬の奴、スプーンを投げてきやがった!しかも!眉間に!命中!そこは急所だ!死ぬ!人殺し!なんて、なんて乱暴者なんだこいつは!

「結人、新しいスプーン持ってくるか、そのスプーン洗ってくるかしてよ」
「待て、ちょっと待て、おかしいぞ、お前。人にスプーンぶつけといて言うことはそれか」
「人をアホ呼ばわりした罰だ」
「アホなんて言ってねーだろ。アホそうな面構えをしていらっしゃるって言っただけ……うわあっ!」

 スプーンの次はクッションかよ!




そんだけです。

Jul.13,2001

 

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