もしタテがピアノを弾けたなら。


も:タテ、ピアノ弾けたらいいけど高原さんと被るからダメだよなあ…
あ:うん、ピアノは高原さん担当だからね〜。でも陰でタテもちょろっと弾けると思う。お母さんに習ってて。
も:あ〜タテ、ちょっとだけ弾けるんだけど、言わないね〜。言う機会もないし。放課後、進藤ちゃんと二人きりの音楽室で、進藤ちゃんに愛の曲を捧げるよ〜って言って、何?? って進藤ちゃんが訝しんでたら、猫ふんじゃった、を弾くんだ。タテは冗談のつもりだったんだけど、進藤ちゃんは「立松ってピアノ弾けるんだ!?」ってびっくりするっていう。
あ:タテが猫ふんじゃった弾くのいい! すっごく楽しげに、テンポよく弾くんだよね。
 進藤ちゃん目真ん丸にするね。
 「何で今まで弾けるって黙ってたんだよ!?」
 「いや、そんな、たいしたことでは」
 「すごいよ! お前ほんとに器用だな! あ、次あれ弾いて! ジャジャジャジャーン!」
 「…『運命』かな?」
も:進藤ちゃんのびっくりしようがいい! 何で今まで弾けるって黙ってたんだよ!? って。別に隠してたわけじゃないのに(笑)
 タテが運命を弾こうとしたら、高原さんが入ってくるんだろ。そもそも今日は、高原さんの演奏を聴かせてもらうことになってて。タテと進藤ちゃんのクラスが早く終わったから二人はみんなより早かったん。
 「高原さん聞いてよ、立松もピアノ弾けるんだよ! もう俺びっくりして!」(誇らしげ)
 「ほう」
 「いやいやいやいや弾けません弾けません」
 「ほんとなんだ高原さん、さっきすごく上手に
 「いやいやいやいや」
 とかやってたら、田中と石塚ちゃんが現れて。
 「二人とも聞いてよ、立松が
 「もういいって進藤ちゃ〜ん、かんべんしてよ〜」
 「弾いてみろ」
 「ええっ」
 「弾いてみろ」
 そんなわけでタテがピアノ弾く流れに。
 「え〜みなさま、本日はお忙しい中、わたくしのピアノリサイタルにお集まりいただきありがとうございます(もうやけくそ)それでは、晩秋にぴったりの、哀しくも甘い調べをお届けします」
 て前口上して、弾くんだな。
 猫ふんじゃった、を。
 ジャジャジャジャーンがくると思ってたのにまた猫ふんじゃったがきて、あれっ? ってなる進藤ちゃん。大笑いする石塚ちゃん。なんだそれはこんなの僕でも弾ける、と眉をしかめる田中。えっ田中もピアノ弾けるの!? と食いついて、田中をたじろがせる進藤ちゃん。高原さんは目を閉じて聴いていたのだが、静かに目を開け、
 「悪くない」
 「えっ」
 「悪くないぞ、立松。もう一曲弾いてみろ」
 「も〜う! ほんとにかんべんしてください!」
 「やっぱり立松はピアノが上手なんだ!」(うれしい)
 「くだらん。せっかく貴重な勉強時間をさいて来てやったのに、なんでこんな
 「まあまあ、高原さんの演奏聴きましょうって〜」
 そんなわけで、高原さんの華麗なる演奏を堪能してから解散。ジャジャジャジャーンも弾いてもらいましたよ高原さんに。
 そして立松と進藤ちゃん二人の帰り道、
 「もう〜、進藤ちゃんにはまいっちゃうよ〜」
 「何が? またピアノ聴かせてくれよな」
 「猫ふんじゃった、しか弾けないよ?」
 「うん」
 「そんなのほんとに聴きたいの〜?」
 「うん」
 「じゃあ二人っきりのときにね!」
 「うん」
 みたいな立進。ほんとは猫ふんじゃった以外も弾けるのよ。
あ:ピアノ立進いいわ〜! 高原さんもかっこいい! 「悪くない」にキュンとした。ほんとにピアノ弾ける人だ。あと田中にまで食いつく進藤ちゃんがいい(笑)どれだけピアノを弾ける人を偉いと思ってるんだ。高原さんの弾くジャジャジャジャーンは力強く勇壮そうだなあ。お手本のような弾き方。もしタテがいつか進藤ちゃんのためにそれを弾いてくれたなら、そこには運命の愁哀のような響きが混じっていて、進藤ちゃんはピアノ曲の奥深さにびっくりすると思う。
 「立松、すごい! 高原さんのと全然違う曲みたい!」
 「いやいやそんなことは」
 「すごいよ、ほんとにピアニストみたい」
 「それは高原さんにいう台詞でしょうよ。俺はこれと猫ふんじゃったが精一杯」
 でもショパンも弾けるのよ。
も:進藤ちゃん、なんでも偉い人になるんだよ。英語喋れる人とか体柔らかい人とか風邪ひいても自力で治す人とかみんな偉い。高原さんの弾く運命とタテの運命の違いに感激する進藤ちゃんいいわ〜。タテがジャジャジャジャーンを聴かせてくれるのは、結構先な気がする。タテ、なんやかんやごまかして弾かなさそうやん。仁美ちゃんが、急に「ピアノやりたい!」とか言い出して、高原ピアノ教室に通い出して、一生懸命に親を説き伏せて、進藤家にピアノがやってくるとかどう? タテは仁美ちゃんにもピアノ弾くことをせがまれるんだけど、「そうゆうお願いは高原大先生におっしゃい」って。進藤ちゃんも何回か弾いてって言ったんだけど逃げられたから、諦め気味。ある休日の夕方、母は休日出勤、父は仁美ちゃんをピアノ教室に迎えに行き、その後に父娘で一緒に買い物で、進藤家には進藤ちゃんと立松二人きり。居間(進藤家ってリビングってよりは居間だよな)で一緒に勉強してて、一息ついたとこ。居間の隅には大きなピアノが陣取っている。
 「仁美のやつ、すぐ飽きちゃうのかと思ったら、結構真面目に続けてるよ」
 「やるね〜ナマイキ娘。高原さんとも仲良くなっちゃって。喜ばしいことなんだけど、タテノリなんだかさみしいわ!」
 夕暮れどき、窓から見える空の景色は赤くて弱々しい。冬の夕焼けは短い。進藤ちゃんも、なんだかさみしい気分になって。
 「なあ、立松、俺はもうこの先ずっと、立松のピアノを聴けないのかな」
 「えっ。何よいきなり。脈絡なく(笑)」
 「みゃくらく?」
 「脈の絡」
 「みゃくらく?」
 「まーそれはともかく。ピアノの話」
 「そう、ピアノ。だから、俺は聴きたいんだよ、立松のピアノが。なのに弾いてくれないから、なんかさみしくて。このまま一生聴けないのかと思ったら、もっとさみしいんだけど」
 「一生て。そんなおおげさな話? てゆうかそんなに聴きたかったの? 不思議だわ〜。なら弾くよ?」
 「えっ! まじで!?」
 「うん」
 「今から?」
 「そう」
 そして静かに移動し、ピアノの椅子に腰かける。
 「じゃあ進藤が聴きたがってた曲を」
 やはり静かに言って、弾くんだな、物悲しさの漂う運命を。進藤ちゃんは、猫ふんじゃったがくると思ってたから一瞬、えっ! っなるけど、すぐ引き込まれるんだ。
あ:仁美ちゃんがピアノ習うのいいね! 進藤家の居間(確かにリビングではない・笑)にピアノがやってくる日、当の仁美ちゃんと同じくらい進藤ちゃんが目キラキラさせてそう。
 「うわー…本物のピアノだ…」
 「ちょっと勘九郎、指紋つけないでよ! 私のピアノなんだから!」
 「(びくっ)な、なんだよ、そんなことしてないだろ」
 「ほらぁもう、ここにつけてる! 最低!」
 なんだよそれくらい…と呟きつつ反論できない進藤ちゃん。それは仁美ちゃんが『ピアノを始める偉い人』になっちゃったから。
 みゃくらくが分からない進藤ちゃんが可愛い! 脈の絡、てタテもまたええ加減な…(笑)
 でも進藤ちゃんはほんとに不安になっちゃうんだろうね。そこでタテが弾いてあげてよかった! 私は感動して泣きましたよ! 進藤ちゃんも泣いたと思う。
 「(弾き終わって)うおっ、何泣いてんの!?」
 「泣いてない、涙が零れただけ(ごしごし)」
 「それを我が国では泣いてるというんですよ…」
 「なんか、俺、感動しちゃって。音楽とか全然わかんないのに、なんか涙が」
 「うーんさすがタテノリ様! 音痴の進藤ちゃんをも感動させるとは
 「音痴じゃないっ!」
 「ひっ」
 「音楽のことは分からないけど音痴では断じてない…!(メラメラ)」
 「すすすみません、言い過ぎました…」
も:仁美ちゃんは高原母(父の可能性もなくはないが教室やってんのはきっと母だよな)に習ってるんだけど、高原母ってすごく清楚で優しいかんじだと思う。仁美ちゃん、「こんな女性になりたい!」と憧れる。
 仁美ちゃんに反論できない進藤ちゃんがすごくいい。そう、仁美ちゃんは偉い人になっちゃったんだよ! ピアノを見つめる進藤ちゃんの羨望の眼差しに、ふと母は「勘九郎もピアノやりたいの?」て何気なく聞く。したら仁美ちゃんが、「勘九郎にはぜ〜ったい無理!」と断言。ちょっとムッとしつつも、ここも反論できない進藤ちゃん。
 泣いちゃう進藤ちゃんいいわ〜。彼の情感豊かなとこが、タテを引き付けてやまないんだな。そして音痴はしっかり否定(笑)そういや確かやまだくんCD出してたよね。真夏の天使だっけ? 持ってたよ。歌上手だったよ。なので私はとてもいいと思うんだけど、やまだくんの中では無かったことになってる気もする。まあそれはそれとして、立進ピアノネタに話は戻るけど、進藤ちゃんはタテに、「いつ頃ピアノ習ってたの?」て何気なく聞くんだけど、タテは「ん〜、小さい頃に、ちょっとだけね」と曖昧に答える。タテは別に習いに行ってはなくて、家で母に教わってた。タテ父は、タテがピアノを弾くのをそんなに歓迎はしてなかった。ピアノ弾く暇があれば、本を読んだほうがいいという考え。まあ、弾くなとは言わんけど、ちらっと見て「また弾いてるのか」と言うくらい。タテはすぐ父の気持ちを察知して、父がいるときには弾かなくなる。ピアノを弾くことが、母親との秘密の楽しみみたいな感じになる。タテにとってピアノは、母親以外の誰かに披露するもんじゃない。ピアノを弾くとき、母を思って、甘いような哀しいような気持ちになる。こんな気持ち、誰にも言えないし言うつもりもないんだけど、でもふと、進藤に言ってみようか、言いたいな、って気になったりもする。結局は言わないんだけど。でも、言いたい気持ちもあるんだよ。大切な秘密の思い出を、進藤ちゃんに聞いてほしい、そしたら何か救われる気がして、でもいざ言おうと口を開いたら、やっぱり無理っていう思いに圧倒される。(言う必要もないし、そんなの言ったところで、そもそも、救われるとか意味分からん、救いなんか必要としてないし、進藤ちゃんだってコメントに困るじゃあないの)って頭から水を浴びたような気持ちになる。で、しばらくして、言わなくてよかったーうっかり言ってたら後悔してたわ、と冷静に考えるっていう。タテ可哀相だね。言えばいいのに。抱きしめてもらえばいいのに。でも私は、大切なことを言えない言わない(だからこそ軽口無駄口たたきまくる)、抱きしめてほしいのに抱きしめられたくないタテが大好きです。進藤ちゃんは大変だなあ。
あ:仁美ちゃんが高原母に憧れるのいい! いつも三つ編みなのを、下ろしてバレッタでまとめてみて、鏡みてうっとりしたりする。タテが来る時は特に、お小遣おろして買ったレースのバレッタ着けたりね! 兄と違ってタテは気付いてくれるし(素)
 やまだくんCD出してたの!? 知らなんだ〜! 真夏の天使て。今のやまだくんにしたら黒歴史なんだろう、やっぱり。ヒゲ全部剃ってくれたら黒歴史じゃなくなるよ。
 そうそう、タテのピアノに纏わる思い出はそんなかんじ! 母とのひそやかな思い出。うーん、タテの気持ちを考えると泣けちゃう。ほんと、進藤ちゃんに言っちゃえばいいのに。「俺、もっと母さんに難しい曲も習いたかったんだよね」って言えばいいのに。でも言えないタテが、私も好き。森の洞窟には、古びて壊れた(ミの音だけが出ない)ピアノもあるんだろうね。いつか入り口から向日葵(※向日葵は、森編での進藤ちゃんの象徴)の花びらが流れてきて、ミの鍵盤に乗った時にポーン…て小さく音を出してくれるよ。




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