ハローハロー溺れながら見る景色はどんなかんじ? ・・・最高で、最低!!
2004年5月22日(土) 進藤ちゃん、恋に溺れるの巻き(五) まあ23日なんですけどね、今日は。 というわけで、こないだ(19日)の大学生タテしんネタの続き。えーとあれから一週間ほど過ぎ、学校が始まります。 物音がして進藤ちゃんが目を覚まし、まだ眠い目をこすりながら灯りが点いている居間に行くと、タテはすっかり着替えも済ませてソファーの真ん中に優雅に腰掛けて新聞を読んでました。 「おはよ…」 寝起きの進藤ちゃんはまだぼんやりしている。口元をしっかり両手で覆ってあくびをしてる進藤ちゃん(寝癖つき)を見て、「かわいい〜」とタテは喜びながら、座ったまま横に移動して進藤ちゃんの座るスペースを空ける。 「おはよーございまーす」 「んー。立松、起きるの早いよ」 「まー今日から学校だしね。一コマからあるし。進藤ちゃんは二コマからでしょ?」 「そうだけど。それでも早くない?」 「そだね。ていうか起こしてごめんね」 「いや、いい」 「今から朝ご飯にするんだけど、食べる?」 「いや、俺はまだいい」 「なんか飲む?」 「いや、いい」 「そう?」 「一人で飲んで食べてて。俺はまだ眠い…」 タテが朝食の用意してんのを、進藤ちゃんソファーにだらりと腰掛けて眺めてる。朝食の用意ができると、進藤ちゃんはのろのろとテーブルに移動して、タテの向かい側の椅子に腰掛け、眠そうな顔で頬杖をついてタテを眺めてる。 「見られてると食べにくいな〜(笑) 進藤ちゃんも一緒に朝ご飯にしよーよー」 「いや、今は全然ほしくないから。気にせず食べて」 「すごい眠そうですネ」 「眠いよ」(目を閉じる) 「おいおい、ここで寝るの?(笑)」 「うーん」(机に突っ伏す) 「かんくろうさーん」 タテは、手を伸ばして進藤ちゃんの頭を軽く叩く。進藤ちゃんはテーブルに顔を伏せたまま、タテの手を掴む。 「パン、一口ちょうだい。耳んとこ」 ちょっとだけ顔を上げて、上目遣いで言う進藤ちゃんに、タテは「無意識なんだか意図的なんだか分かんないけどこの人のこういう態度ってほんと心臓に悪い…!」と思って赤くなりつつ、パンの耳んとこをちょっと千切って進藤ちゃんの口元に持っていく。そしたら進藤ちゃんはパクっと一口で食べちゃって、またテーブルに突っ伏す。 「あー眠い…」 「ノリオもね、まだちょっとだけ眠かったんですけどね、今ので一気に目が覚めたっていうか色々あれよ、活気付かなくてもいい部分まで活気付いたというか」 とか言ってるとこで、タテの携帯が鳴って、タテは「えー…」とか言いながらも出る。 「うわー、ちょっと、はやっ。うん、あー、はいはい、分かった、もう出る。じゃーな、はいはい、分かった分かった」 タテの電話を聞きながら、学校の子からかなー、と進藤ちゃんはぼんやり思う。 「春休みの課題をさー、今日学校早めに行って仕上げる予定なんだよね〜。ぎりぎりであれなんだけど」 タテは慌てて食器とか片付けて、あっという間に歯磨きして出掛ける準備を終える。動きに無駄がなくて鮮やかだなー、と進藤ちゃんは感心しつつ、やっぱりぼんやりタテを眺めてる。 「というわけでもう出るから。じゃーね、進藤ちゃん。二度寝して遅刻しないようにね!」 タテは進藤ちゃんのほっぺに音を立ててチューしてから出て行く。 タテがドアを開けたとき、「おせーよ」って誰かがタテに言ってる声が聞こえてきて、タテはそれに気軽に返してる。「わざわざ迎えに来んなー」「早く目が覚めたからつい。ていうか何、お前髪が黒、」 バタン そこでドアは閉まり、会話も途切れる。 (全然知らない声だった。そりゃそうか。立松にだって、田中以外にも学校の友達はいるよなあ、普通に。ていうか田中とは学部違うんだし、学校では田中以外の、俺の全然知らない人と一緒にいるんだろうな、普通に) 全然普通のことだ。 と、進藤ちゃんは思う。 普通のことなのに。 ああもう。 「心狭すぎて笑える…」 とか独りごちてみたりして。滑稽でございます? 2004年5月23日(日) (六) 続き。今回のネタをずっと(「進藤ちゃん、恋に〜(一)」の時点から)やりたかったんだけど、なかなか持ってけなかった。 さらに一週間後くらいの話。進藤ちゃんの所属ゼミか何か(曖昧)で飲み会が行われることになるといいです。メンバーは五人(くらいにしとこう)なんだけど、進藤ちゃんともう一人(女子)以外の人たちが、当日になって、昨夜から風邪気味でーとか急にバイト入っちゃったーとかで行けなくなって、また別の日にしようってことになったんだけど、そのもう一人の女子が「せっかく予定空けてるんだし、二人だけでも今日飲みに行かない?」と進藤ちゃんに言います。 「えっ」 「うわ、嫌そうな反応(笑)」 「いや、別に嫌とかじゃなくて」 「じゃあ行こうよ。私、行ってみたい店あるんだよねー」 進藤ちゃんはなんとなく断りきれなくて、行くことに。もし立松が俺の立場だったらどうするんだろ。立松が女の子と二人だけで飲みに行ったりしたら絶対やだよなあ…。とか進藤ちゃんは思うんだけど、「やっぱ行けない」とは言えず、行っちゃいます。先に言っておきますと、この女の子は進藤ちゃんに対して恋愛感情はありません。暇なのが嫌いなので、入れてた予定が駄目になって空き時間ができたのが嫌なだけなのでした。 一緒に行った店は結構お洒落な雰囲気で居心地もよくて値段も手頃で、進藤ちゃんは、今度立松と来よ、とか思う。女の子はよく喋るタイプだったので、進藤ちゃんは相槌打ってるだけでよくて、無理に自分から話さずに済んでほっとしてる。同じゼミ(か何か)になったときは、「ちょっと苦手かも」って思ったんだけど、女の子の話す様子とか仕草とかを見てると、「案外気が合うかも」って思えてくる。何故そう感じるのか、ちょっと考えたらすぐ分かった。話し方が、どことなくタテに似ていたからだった。進藤ちゃんは、そんなに強くないくせに、うっかりぐいぐい飲んでしまう。そしたら進藤ちゃんも饒舌になって、女の子(酒強い)は喜びます。 「進藤君って彼女いるの?」(ここぞとばかりに) 「彼女っていうか、付き合ってるっていうか、うん、いる」 「えーっ、そうなんだ〜?」 「えーっ、て。その反応は一体…」 「いやー、ちょっと知り合いで、他の学部の子なんだけど、進藤君のこといいなって言ってる子がいて、だからね」 「へー…」 「へー、って(笑) 全然気にならないんだね」 「あー、いや、いやっていうか、うーん、うん、気にならない」 「じゃあその子は望み無しだ」 「うん」 「断言した(笑) 羨ましいなあ」 「羨ましい?」 「羨ましいよ。進藤君も、その彼女も」 「そう?」 「そうだよ。うまくいってるんだなー愛し愛されちゃってんだなーという感じです」 「あー、うん、でもどうなのかな。俺の方がたぶん溺れてる」 「…溺れる(笑)!」 「そう」 女の子は楽しそうに笑って、進藤ちゃんは女の子をトロンとした目で不思議そうに眺めてる。 「進藤君ってそういうタイプには見えないのにね。意外に冷静っていうか現実的な感じ? 彼女のこと、すごーく大事にはしてそうだけど、我を忘れてのめり込む、っていうのは想像つかない」 「そう?」 「案外情熱的なんだなあ」 「うん、そう」 酔って赤い頬した進藤ちゃんがいともあっさり頷くものだから、「かわいいなあ」と思って女の子はまたもや笑ってしまう。 「幸せだね」 「なんか最近変なんだよ。だって、何をしててもその人のことを考えてる。ちょっとどうかしてるんじゃないかっていうくらい。俺は無様に溺れてるんだけどさ、そいつは優雅に水の上をすいすい滑ってる感じなんだよな。って、こんなこと言ってる自分がなんか嫌なんだけど。 これって幸せなのかな」 女の子はしばらく考えたあと、幸せなんじゃない? と結構無責任な微笑みを浮かべて軽く言った。 結局進藤ちゃんは酔いつぶれて、店で半寝の状態になっちゃて、帰れそうになかったので、女の子はタクシーを呼ぶ。 「進藤君の家ってどこ?」 「うーん、あっちのほう…」 「あっちってどっち!?」 どうしようもなかったので、女の子は友人に電話して、名簿とか見て住所を教えてもらう。そんで、無事アパートに着く。 ちょうどその頃、「今日は飲み会って聞いてたけど、そろそろ帰って来るんじゃないかなー」とか思って外に出てみてたタテ(なんという偶然☆)は、女の子に支えられてぐったりしてる進藤ちゃんを見付けてびっくり。慌てて駆け寄る。進藤ちゃんは、半寝だったけど、タテにすぐ気付いて、「たてまつ…」と言いながら女の子から離れ、タテに寄り掛かる。進藤ちゃんをしっかり支えるタテ。 「うわー、どうもすみません! あー、えーと僕はこの酔っ払いの同居人でして。いや、どうもまことに申し訳ございませんというか」 「あー、いえいえ、全然いいです」 女の子は、タテにちょっぴりポワーとなる。タテの見た目が彼女の好みだったからです。タテと女の子のやりとりを聞いている進藤ちゃんには、女の子の緊張が伝わってきて、「さっきまでと全然態度が違う…」とか思う。 「あの、じゃあ、そろそろ。タクシー待たせてますんで」 「あっ、タクシー代!」 「あー、いいですいいです。手持ちありますし。明日学校で本人に請求しますから…(笑)」 そんで、女の子は去っていく。 進藤ちゃんはわざと思いっきりタテに寄り掛かって、ちっとも自分で歩こうとしません。タテは進藤ちゃんを抱えるようにしながら、階段を上がりつつ、「二人だけで飲みに行ってたの〜?」と口を尖らせる。 「しょうがないじゃん…。急に他の人が来れなくなったんだから。ただゼミ(か何か)が一緒なだけの子だよ。それに、あの子、立松みたいなのがタイプなんだよ」 「は〜あ? 何よそれー。もーー」 やっとこ部屋に着いて、進藤ちゃんをベッドに寝かすと、進藤ちゃんはタテの手を強く引っ張って引き寄せる。 「おわっ! 危ないでしょーが。もーこの酔っ払いわ〜」 「立松…」 そんで進藤ちゃんからキス。 「…お酒くさーい」 ついでにほのかな香水の匂いも。女の子に支えられてたときに移ったものなんだろうけど。ちょっとっていうかかなり悔しい。と感じるタテ。 今度はタテから口付けようとすると、進藤ちゃんは「だめ」と呟くように言って、タテの口を塞ぎ、もう一方の手で自分の口を塞いで眉を顰める。 「どったの?」(進藤ちゃんの手首を掴んで自分の口から離しつつ) 「……い、…そう」 「ん? 何?」 「きもちわるい。吐きそう」 「え!」 進藤ちゃんはばっと起き上がって、トイレに向かう。タテが慌ててついて行こうとすると、振り返って制止する。 「バカ、来んな。吐くとこ見られたくない」 タテは一瞬びくっとなって止まって、「はい」と答える。 そりゃまあ、見られたくないですよねー タテは、去年の秋の同窓会(の二次会)を思い出す。悪酔いして、進藤ちゃんに背中さすってもらいながら店のトイレでゲーゲー吐いた。あんときはすごく苦しかったなあ。苦しくて、ほんとに。背中をさする進藤の手があんまりにも優しいから、どうしようもなくて。もーいっそ俺もトイレに流されるべきなんじゃないのかーとか思ったりもした。 進藤ちゃんがトイレにこもってる間、タテは暗い部屋で進藤ちゃんが出てくるのを静かに待ってる。 トイレから出てきて水道で口をゆすいで顔を洗った進藤ちゃんは、「もう大丈夫」としっかりした調子で言っているけれど、足元は覚束ない。濡れた前髪や赤い唇が艶かしい、とタテは思う。手を貸そうとするタテを、「一人で歩けるよ」と拒んで、進藤ちゃんはベッドに向かう。タテは、冷たいミネラルウォーターをコップに注いで、進藤ちゃんがぐったりと横たわっているベッドに腰掛ける。 「飲む?」 「うん」 自分で飲めるよ、と言うのかと思ったけど、進藤ちゃんは横たわったまま、タテが手に持ったコップから水を少しずつ飲む。進藤ちゃんが咽ないよう、水が零れないよう、タテは細心の注意を払ってコップを傾ける。飲み終わった進藤ちゃんは、はあ、と息を吐き、ゆっくりと目を閉じる。 「何かあったの?」 進藤ちゃんの口の周りに付いた水を、指で優しく拭って、これ以上ないほど穏やかな調子でタテが訊ねる。 「何もないよ」 何かあったならばまだ対処の仕様がある。言うほどのことは何もないのだ。だから、どうしてほしいのか、どうしたいのか、分からない。 進藤ちゃんが苦しげに息を吐くと、「大丈夫?」と、やはりとても穏やかな声でいたわりながら、タテが進藤ちゃんの額に手を置く。冷たくて気持ちいい。なんて優しい掌だろう。油断すれば、涙が零れてしまうほどに。 「大丈夫? 苦しくない?」 「大丈夫。立松がいるから、大丈夫だよ」 大丈夫じゃないのも立松がいるからだけど。歓びも苦しみもこの男のせいなのだ。と、思ってみる。なんて身勝手な思いだろう。そして、なんと甘美な。 タテはうっかり進藤ちゃんに口付けようとしてしまう。進藤ちゃんはさっと横を向いてキスを避ける。 「ごめんね。苦しいときにチューしようとするなんて非常識でした。許して」 「違う。吐いた後だし、匂い残ってるかもしれないじゃん。それが嫌なだけ」 「なんだ、そんなこと、 「そんなことじゃない。俺は気にするよ」 「……」 「まあ立松が吐いた後とか納豆食べた後とかでも、俺はキスできるけど」 「えー、何それー」 「俺、卑怯だよな。立松の弱い部分とか醜い部分、全部見せてほしいとか受け入れたいとか思ってんのに、自分のみっともないとこは見せたくない。って、今でも充分みっともないんだけど」 「進藤ちゃんみたいな高潔な人が卑怯だっていうなら、俺なんかどうなっちゃうのよ。世界はどうなっちゃうのよ。あなたが誠実でないというなら、この世に誠実なんて、清潔なものなんて、ないよ」 なんて言葉を重ねてみたところで。とても伝えることができない、とタテは悔しく思う。精一杯の思いを込めて、タテは進藤ちゃんの額にキスをする。「口じゃないならいいよね?」と了解を取ってから。頬にも、顎にも、首にも口付ける。進藤ちゃんは肩を震わせ、タテのシャツにしがみ付く。タテが唾を嚥下し喉が震えたのを見て、彼の欲情を知る。このまま押さえ付けられるかもしれない、と進藤ちゃんは思ったが、タテは進藤ちゃんの頭を撫でて、耳元で、「おやすみなさい」と甘く囁いただけだった。そして、静かに自分の部屋に戻って行こうとする。 「立松」 呼び止めてみるも。 「はい」 「おやすみ」 一緒に寝てよ とは言えない。 2004年9月26日(日) (七) 翌日、進藤ちゃんは二日酔いで辛かったんだけど、学校に行く。タテはすごく心配して、「休んだら〜? 俺も休むから」とか「送っていくよ」とか色々言うんだけど、進藤ちゃんは丁重にお断り。 学校に着いて、講義室に行ったら、ゼミ(か何か)が一緒の例の女の子に声を掛けられる。 「おはよう! 顔色わるいよ?」(元気いっぱい) 「おはよう。…顔色いいね?」(ぐったり) 「優雅に水の上をすいすい滑ってる彼女は元気?」 「…う、わーー、もう、勘弁して…」(机に突っ伏す) 「わはははは」 「いや、そうじゃなくて」(はっとなって、顔上げる) 「ん?」 「昨日はほんとにごめん! もうすっごい迷惑かけた。ごめんなさい」 「あーいやいや、それは別に」 「あー、タクシー代タクシー代」 「いや、いいの。その代わり、夕飯奢ってくれない?」 「え」 「私、ラーメン食べたい」(とっても笑顔) 「え」 女の子は、タテがバイトしてるラーメン屋に行きたいと言う。なんでタテのバイト先知ってるかというと、進藤ちゃんの友人とかから聞いたんでしょうね(適当) そんで進藤ちゃんは嫌がるんだけど、女の子はねばるねばる。 「…あいつ、彼女いると思うよ」 「いいの、別に。全然知らない人だし、一目惚れとかそんなのありえないから、好きとかじゃないし、彼女になりたいだなんてとんでもない」 「じゃあなんで…」 「進藤君こそなんでそんなに嫌がるのー! 連れてってよー!」 「あ、今気付いたんだけど、今日はあいつ入ってない日だった」(苦しい) 「それならそれで別にいいよー。行こ」 なんかもう進藤ちゃんは断りきれなくて、他の子も何人か誘って行こうかな…と諦めて曖昧にオッケーする。でも、声を掛けた人はみんな今日用事があるみたいで、またもや二人だけで行くことに。一気に行きたくなくなるんだけど、今更「やっぱ行かない」とも言えず、進藤ちゃんは憂鬱です。はっきり断らなかったことを今更すごく後悔する。 タテは学校帰りに田中にうっかり出会います。そんで立ち話とかしてるんだけど、いきなり田中が、 「立松、お前、変だぞ」 「お言葉ですが田中さん、わたくしが変なのは今に始まったことじゃーなくってよ」 「確かに、君が変なのは今に始まったことではないが、」 「オイオイ」 「あれだけ進藤進藤うるさかったというのに、全然進藤の話をしなくなった」 「あら、聞きたいの?」 「聞きたいわけがないだろう!」 「あっそー。それよりさー、」 「話を逸らすのか」 「逸らしてないでしょ」 「逸らそうとしただろう」 「なんなのよー、もー」 というような会話してました。 授業を終えた進藤ちゃんと女の子は、それぞれ適当に時間潰した後、待ち合わせてラーメン屋に行きます。注文を受けに来たのはタテで、タテはめっちゃびっくりして一瞬止まるんだけど、次の瞬間には見事なまでの営業スマイル。でも進藤ちゃんには、タテが怒ってるっぽいのが伝わってきて、完璧な笑顔が恐ろしく思える。タテは進藤ちゃんに向かって微笑みながら、 「もしかして彼女?」 とか言ってきます。 (…自業自得だけど…、こわー…) 一気に青ざめる進藤ちゃん。「全然違います!」ときっぱり否定する女の子。 そんでまあ、「うちのぎょうざ美味しいよー」とか言うタテの意見を聞きつつオーダーして、タテは笑顔のまま去っていきます。 「立松君て、なんかいいよね、物腰柔らかというか。かっこいい。大人っぽいよ」 「いや、ほんとは子どもっぽいよ」 進藤ちゃんは家に帰ってから、そわそわしてタテを待つ。タテはいつもの様子で「ただいまー」と帰って来る。 「お、おかえり」 「いやー今日は結構びっくりした。来るとは思わなかったから」 「あ、いや、あの、ごめん…」 「なんでそこで謝るの(笑) またいつでも来てよ。友達とでも、一人でもさ」 タテは一切責めるようなことを言わず、全然普段どおりで、「お風呂入ってくるねー」と風呂の用意してる。進藤ちゃんは、予想外(タテに責められると思ってた)の展開に、余計うろたえる。でも何を言うこともできない。 タテが風呂から出た後、二人でなんとなくニュース見てる。タテはソファーに腰掛けてて、進藤ちゃんは下に座ってる。タテは割とちゃんとテレビ見てるんだけど、進藤ちゃんはちらちらとタテの様子を窺うばかりで、全然ニュースとか見てないし聞いてない。 「何?」(タテ、いきなり進藤ちゃんの方を向く) 「えっ!」 「いや、さっきから視線を感じるから〜」 「別に…」 「あー、あれだ、ほら、俺が『もしかして彼女?』とかって嫌味言ったの怒ってんでしょー。ごめんね、おとなげなくて。でもちょっと嫉妬しちゃったっていうか〜、昨夜も一緒に飲んでたんでしょ? 仲良いんだなーと思って…、 「怒ってなんかない!」(大声) 「えっ」 「全然仲良くないし」 「そ、そーですか」 「ていうか、あの子はお前に興味持ってんの。それで、立松がバイトしてるラーメン屋に行きたい行きたい行きたい(中略)…ってすっっごく言われて、それで俺、なんか断りきれなくて」 「へー、そーだったんだー」 「俺だったらヤだ。立松が、俺の全然知らない女の子と一緒に二人きりで、俺のバイト先に来たりしたら、すっごいムカつくと思う」 「うん」 「……」 そんでしばらく二人して無言。 進藤ちゃんが「ごめん」って言おうとしたら、タテのほうが「ごめんね」って言う。 進藤ちゃんは、なんで謝られるのか全然分からなくて、俺の方が悪いのに、って思って、でもなんだかすごく傷付けられたような気分になって、胸が痛む。 「隣りに座ってよ、進藤ちゃん」 自分の横をポンポンと叩くタテ。進藤ちゃんは数秒悩んだ後、ゆっくり立ち上がって、ソファーに腰掛ける。そしたらタテは、進藤ちゃんの肩に頭を乗せる。タテの髪はまだ完全には乾ききってなくて、進藤ちゃんの肩口がじんわりと湿っていく。 「俺、自分のことを駄目な人間だって思ったことなら何度もあるけど、こんなに嫌な人間だって思ったのは初めてだよ。こんなに心狭くて、わがままで、独占欲が強いなんて思わなかった」 進藤ちゃんは小さな声で、呟くように話す。こんなこと、口にしてしまったら気が滅入るだろうと思ってたのに、意外に心は落ち着いていて、思考がクリアになっていく。 タテは、フフフフフ、って笑い出して、進藤ちゃんの肩に、頭をぐりぐり押し付ける。何すんだよ、って進藤ちゃんが言ったら、髪拭いてんのよ、とやっぱり笑いながら返す。 「立松、俺、結構真面目に話してるんだけど」 「分かってますって〜」 「分かってない」 「分かってるって。溺れてるってことでしょ。今更だよ。ていうか遅すぎ。俺は最初っから溺れてたも〜ん、進藤ちゃんを一目見たときからね!」 …はあ、そうですか… って、 「一目見たときから、ってそれは嘘だろ、明らかに」 わははははバレたか、と言ってタテは笑う、楽しそうに。進藤ちゃんは気が抜けて、やっとちょっとだけ笑えた。 |
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