夏の切れ目が縁の切れ目!?

2003年10月16日(木)
 ちょっと間が空いちゃった。パソコンと向かい合う隙を見つけられなかったぜ。えーと今日は前回の続きじゃなくて、もっと前の話を。高校んときにまでちょっと遡ります。シンクロ公演が終わってから、タテは進藤ちゃんとどことなく距離を置くようになります。どう接すればいいのか、急に分からなくなったんです。今までどおりにやればいいんだろうけど、それが分からない。考えれば考えるほど分からない。進藤ちゃんと上手く話せないまま(進藤ちゃんのほうは、「立松も、受験で忙しいもんな」とか思って気にしないようにしてますが、ほんとは立松の態度にめちゃめちゃ引っ掛かりを感じてます。でも直接は言わない)秋が来てしまう。タテは、「夏に何かを落とし物してきて、気付かないまま秋になっちゃったよ。なーんて。ヘヘ…」とか思って、秋風に吹かれながら一人で笑ってみたりなど。結局、落とし物は見付からないままというか何を落としたのかさえはっきりしないまま、秋が終わって冬が来て冬も終わって卒業シーズン。ってすごい省略の仕方(素)まあいいや。二人は別々の学校へ(タテと田中は一緒の学校行ってくれたらおもろいから、二人ともとーだい。進藤ちゃんはタテと同棲する必要があるから東京にあるどこかの大学行ってください。…もう無理矢理ですね!)。五月の連休中に、シンクロメンバーで集まれる人だけ集まって遊んだりするんですが、タテは行きません。なんとなく、進藤ちゃんに会うのが怖かったから。そんとき、田中はタテの携帯番号を進藤ちゃんに教えます(無断で!)
田「お前からかけてやってくれ。あいつは臆病者だからな」
進「……」
田「どうした?」
進「いや、田中ってさ…」
田「なんだ」
進「意外なくらいおせっかいだよな(素)」
田「おせっかい!?」
進「あっ、いや、ごめん、そうじゃなくて、いい意味で。いい意味でおせっかい! ああいや、おせっかいっていう言い方が悪かった。えっと、世話焼きっていうか、面倒見いいよな、うん!」
田「……」(改めて己の行動を振り返ってみて色々後悔している)

 とか打ってるうちに時間が無くなってきたので、これの続きは土曜日に。

2003年10月18日(土)
 前回(16日)のメモの続き。
 連休明け、田中は学校で偶然タテに会います。田中が口を開こうとした瞬間、タテは耳を塞ぎ、「連休中の話なら一切聞きたくないわっ!」と大げさに首を振る。田中はため息を一つ吐いた後、呆れたように、
「まったく、お前はいつまでそうしてるつもりだ?」
「…いつまでざんしょ」
「この先もずっと、耳を塞いで、目を閉じて、生きていく気か」
「ハ、なにをそんな、大げさな言い方を」
「大げさか?」
「そおよ、大げさよ〜。俺の人生、進藤ちゃんがすべてってわけじゃあないのよ」
「そうか」
「そうよ」
「まあ、どうしようとお前の自由だからな。余計なおせっかいはやめとく」
「……」
 じゃあな、と去って行こうとする田中の腕を、タテは思わず掴んでしまう。
「なんだ?」
「…(おそるおそる口を開き) し、進藤ちゃんは、タテノリについて、何か言って、ました、か?」(俯く)
 田中はタテの手を緩やかに振り払い、
「一切聞きたくないんだろ」
 と、さらりと言い残し、すっと通り過ぎて行きます。タテはしばらくその場を動けませんでした。地面を見つめたまま。
 昼休み、学食で昼食を食べた後、タテが友人と談笑していると、田中からメールが来ます。メールには、進藤ちゃんの携帯番号とメルアドが記してあり、その後に、
『進藤は、お前のことをすごく気に掛けていた。高校のときからずっとそうだったろう? お前が一番よく分かっているはずだ』
 という田中からのメッセージが。メールを見た後、タテはテーブルに突っ伏してしまいます。一緒に居た友人達は驚いて、「どうしたの!?」とタテを心配する。
「(突っ伏したまま) なんでもないで〜す。いきなり眠気に襲われちゃったのよ。先、授業行ってて。俺はしばらく眠りますので」
(…おせっかいタナーカ!)

 その夜、進藤ちゃんはずっと携帯とにらめっこしています。タテに電話をかけたいんだけど、冷たくあしらわれたら、と考えると恐ろしくて、携帯を持つ手が震える。長い間考え込んだ後、「ああもうどうにでもなれっ!」と思って、思いきって電話します。電話の向こうのタテは、とても親しげな口調だったので、不安でいっぱいだった進藤ちゃんは脱力してしまう。気が抜けた後、なんだかすごく安心して、心の中があったかくなって、涙が出そうになる。
「結構久しぶりだよな」
「うん、久しぶりだよね〜。なんかもう、信じられないくらい久しぶりな気がする」
「…あー、ていうか、あの、えっと、いきなり電話しちゃって迷惑じゃなかった?」
「なんで? めちゃめちゃ嬉しいよ、俺。嬉しくて死にそう」
「すげー誇張してるし…」
「本当だよ。本当に、うれしいよ」
「……」
「今年度入ってから最も嬉しい出来事だね」
「……」
「アハハ、進藤ちゃんさあ、泣いてない?」
「なっ、なんでそんな! そんなわけないだろ!?」
「久々にタテノリの声聞いて感動しちゃったのかな、と」
「バカじゃねえの」
「わはわは、バカでございまーす」
「ほんと、バカ」
「うふふ。キャンパスライフはどうよ? 楽しい?」
「まあ、うん、普通、かな? 立松は?」
「んー、そーねー、進藤ちゃんが居ないからつまんないよ」
「…お前ってほんと調子いい奴…」
「ねえ、会おう?」
「え…」
「声聞いたら、実物拝みたくなっちゃった。生進藤ちゃんが見たいでーす!」
「調子いいなあ…」
「でも、進藤ちゃんも会いたいでしょ、大学生になった憲男に…★」
「別に」
「何その態度〜」
「じゃあ近いうち、会お。田中も呼んでさ」
「うん、そだな。田中にもゆっとく」
 で、後日、再度二人で連絡取り合って、約束して、待ち合わせ場所に行くんだけど、タテは田中と一緒じゃないんです。
「あれ? 田中は?」
「んー、田中さんは急用が出来て来れなくなりましたの」
「そうなんだ…」
「ってウッソ〜。田中には最初っから声掛けてないし(笑)」
「えっ」
「だって進藤ちゃんは田中と連休中に会ってるでしょ? で、俺は奴にはいっつでも会えるし。だから、いいやーと思って。ていうかまあ単に進藤ちゃんと二人っきりで会いたかっただけなんだけど」
「えっ…」
「行こ」(進藤ちゃんの腕を引っ張る)
「あの、立松…」
「俺ねー、連休中、短期のバイトしてたんだー。で、早速バイト代が出て、今結構金持ちなんですよ。というわけで、今日はおじさんが昼飯おごっちゃるけんの〜」
 進藤ちゃんは「奢ってもらうなんて悪いから」と遠慮するんだけど、タテは絶対奢ると言ってききません。何が食べたいかとしつこく訊かれ、進藤ちゃんは何も思い浮かばずに困ったんだけど、ふと目の前に回転寿司店があって、「あ、じゃあここで…」と言います。
「ここでいいの?」
「うん」
「なんか、決めらんないからって適当に目についた店にしただけでしょ…。せっかく何でも奢っちゃるってゆってんのにぃ〜」
「だって…」
「まあいいや! ここにしましょー」
「俺すごい久しぶりだよ、回転寿司」
「そおなの? 俺はね〜結構よく食べるよ〜。回るお寿司好き〜」
(『まわるおすし』だって。かわいい…)
 お腹いっぱい食べた後は、公園でベンチに座って缶コーヒーを飲みます。コーヒーは進藤ちゃんの奢りです。
「立松、ちょっと変わったよな」
「そお?」
「うん、なんかちょっと大学生っぽくなったっていうか」
「大学生だもーん(笑)」
「まあそうなんだけどさ」
「うん(笑)」
「よっ、東大生」
「何よーもー」
「ははは」
「なあ、これからもこうやって、ちょくちょく会おう? ね?」
「…うん」(嬉しい)
(進藤ちゃんてば、両手で缶持っちゃってるよ。かわいいなあ…)
「…立松、あのさ…」
「ん〜?」
「…あー、いや、ううん、やっぱいいや。なんでもない」
「えー、言ってよー(笑)」
 進藤ちゃんは、学祭終わってから俺のこと避けてなかった? みたいなことをさり気なく訊いてみようかなって一瞬思ったんです。でも、やっぱ訊けないって思い直して止めました。
 次のメモもこれ(同棲前の話)の続きを。

2003年10月19日(日)
 そういや私、最後に立進SS更新したのが8/24なんですよ。…さ、さむー。さむいですね、普通に! それにしてもまだ朝の六時なんですけど。忘れないうちに昨日の続き。
 それからタテと進藤ちゃんは、頻繁に会うようになります。
「ね、進藤ちゃん、彼女とかできた?」
「いや、全然。あー、お前は?」
「ぜんぜん(笑)」
「全然ってことはないだろ。だって、ほら、お前、モテるだろ、何気に」
「何気にって(笑)」
「うん」
「いやー、ないね。ないない。だって進藤ちゃんと会う時間が減るの、ヤだもん。進藤ちゃんと一緒に居るのが一番たのしいし、大事」
「…お前…よくそんなことが言えるな…面と向かって…」(赤くなってる)
「フフフ…」
「…でも、よかった」
「ん?」
「前みたいに戻れてよかった」
 うれし恥ずかしそうに微笑む進藤ちゃんを見て、タテは、
(やっぱ死ぬほどかわいいなあ)
 と、素で思いつつ、
(なんも知んないで、うれしそうに笑ってら)
 と、どこか心の隅が冷たくなるのでした。
 そんで、日々は過ぎて(またこういう省略の仕方を…)いつのまにか梅雨入り。昼過ぎから雨が降り出した日、朝うっかり傘を持っていくのを忘れた進藤ちゃんは、雨に打たれて濡れながら帰ってきます。進藤ちゃんの部屋の前、同じくびしょ濡れになったタテがちょこんと座っているのを見て、進藤ちゃんは大いに驚く。
「立松…! お前何やってんだよ!」
「何って…、っくっしょん!」(くしゃみの後、はなをすする)
 タテが震えてるので、理由は後にして、進藤ちゃんは急いでドアを開けます。
「早くシャワー行ってこいよ」
「や、ご主人様がお先にどうぞ」
「いや、一応客だから、お前から…、って、立松、お前ほんとに冷たいよ」(タテの頬をペチッと触る)
 早くあったかいシャワー浴びて来いと言われ、背中を押されて、タテは風呂場に強引に押し込まれそうになります。
「もー勘九郎さんったら強引なんだから…★」
「変な言い方するな」
「いっそ一緒に入ろうか!」
「や、無理だよ。だって一人でも狭いくらいだもん」
「いいじゃん、密着しようよ! …はっくしゅん!」
「(タテの頭を小突き) またくしゃみしてるし。もーおとなしく入って来い!」(無理やり風呂場に入れて、風呂のドア閉めようとする)
「ワーワー待て! 待ちなさい! まだ服も脱いでないでしょ!」
 で、大騒ぎしつつ、タテは先にシャワーを使わせてもらう。シャワー浴びつつ、「あー雨に濡れた進藤ちゃんてば色っぽかったにゃ〜」とか思ってる。進藤ちゃんは、とりあえずタオルで頭とか拭いてるんだけど、濡れた体が寒くて、思わず身震いする。早くシャワーを使いたいと思ってるときに、タテの「一緒に入ろうか」という言葉を思い出して、頬が熱くなる。
「…熱でそ…」
 タテは進藤ちゃんを気遣って、めちゃめちゃ早く風呂から出てきます。もっとゆっくり使っていいのに、と言いながらも、進藤ちゃんも風呂へ。
 進藤ちゃんが風呂から出た後、二人であったかいコーヒーを飲んで、のんびりと、テレビを見るともなく見る。タテは進藤ちゃんの肩にもたれかかり、
「雨ってさ、憂鬱でしょ。でも、こうしてると、雨の日も悪くないなあって思えてくる」
「うん…」
「へへへ…」
「なあ、なんで来たの?」
「理由が無いと来ちゃだめ?」
「そんなことないけど…。でも、傘も差さずに…」
「それは進藤ちゃんもでしょ(笑)」
「いや、俺はうっかり忘れちゃっただけで…、ってもういいや…」
「うん(笑)」
「…うん」
「膝枕してもらいたいんですけど」
「…うん」
「えっ、いいの?(笑)」
「えっ、いや、いいっていうか、まあ別に」
 で、タテは進藤ちゃんに膝枕してもらいます。
「あー至福。もー死ぬなら今しかないってかんじ」
「大げさだなあ」(呆れてる)
「しやわせだにゃ〜」
「おっきい猫…」(おそるおそるタテの頭を撫でる)
「にゃ〜ん」
 ここで進藤ちゃんは、今なら訊ける、って思うんです。相手は猫になってるし、今なら訊けそうな雰囲気だ、って。進藤ちゃんはタテの頭を撫でながら、
「…なあ、俺のこと、避けてただろ? 学祭終わってから、ずっと」
「……」
「…なんで?」
「んー…」
「猫語で答えても、いいよ」
「わはは」
「はは…」
「人語で答えるよ」
「…ん」
「好きなんだ」
 立松の言葉に、進藤ちゃんの手の動きは止まる。でも、すごく驚いたってわけでもない。こんなふうな答えが返ってくるんじゃないかって、ちょっとは思ってたからです。タテは、「進藤ちゃんが好きなんです」、「それだけです」、と間を置いて言った後、進藤ちゃんの手を取って、自分の口元に持っていって、手の甲に軽く口付ける。
「好きなのに、避けんのか、お前は…」(微かに声が震えてる)
「はっはっはーっ」
「笑いごとかよ」
「ごみんなさいでした」
「もう避けないで」
「……」

「好きなんだよ」

 進藤ちゃんの言葉に、タテはゆっくりと目を閉じる。雨の音が、妙に耳につき出す。

(ああ、神様、
 天にも昇るよな気持ち。
 同時に、地獄に突き落とされた気持ち。
 心が、粉々になる)

 目を閉じたままのタテの頬に、進藤ちゃんの唇が降りてくる。

(雨の音しか聞こえないよ、進藤ちゃん)



 

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