(駄目よ、よわいから。)


別れても好きな人

2003年10月20日(月)
 えーと、やっとこ本来の流れに戻って、10/13のメモの続きを。って、もう本来の流れというのがなんなのか分からなくなってきましたけど、クリスマスのとこからです。クリスマス終わってからも、タテは進藤ちゃんちに滞在します。「ずっと居れば?」って進藤ちゃんが言ったから。
「ずっとって…、それって永遠にってこと? それってプロポーズ?」
「は?」
「うわー冷たい反応」
「ずっとっていうのは、冬休みが終わるまでってこと。俺、学校始まる前の日までこっちで居るから。だから、お前も居れば?」
 そいで、まあ「一緒に初日の出見に行こうね」とか約束するんですが、元旦の日、進藤ちゃんが朝早くに目覚ましの音で起きたら、タテが居ないんですよ。出てっちゃってるんです。
「…またこのパターン?」
 もう怒るとか悲しむとか呆れるとか、そういうのんは飛び越えちゃってて、進藤ちゃんは思いっきり脱力します。でも今回は、置き手紙が残されていました。進藤ちゃんの机の上に。

『忘れ物をしたので、取りに行ってきます。
いつになるか分からないけど、ちゃんとあなたのところへ戻ってきます。』

 余白にはおっきく、「たてのり」という、例のサインが書かれています。
 えーと、「忘れ物〜」とかいうフレーズは、五話の進藤ちゃんの置き手紙からのあれです。進藤ちゃんは、しばらく唖然とした後、「田中め、言ったな…」とか思って、恥ずかしくなる。そして、胸が詰まって、
「なんで一緒に取りに行かしてくれないんだよ…」
 進藤ちゃんは思わず手紙を手でぐしゃって握り締めてしまいますが、その後慌てて、一生懸命元に戻そうと、手で伸ばす。
(後でアイロンかけよ…)

 タテは進藤ちゃんちを出てってどこ行ったかというと、実家に帰ってます。シンクロ公演後、父親との関係は、以前よりずっと良くなったけれど、タテはまだどことなく引け目を感じている部分がある。でもまあ、普通に話せてます。大学はどうだ? と父に訊かれ、順調です、と笑顔で答えながら、心の中はぼんやりとしてくる。雑煮を食べながら、会話の合間に、窓の外をぼーっと眺めてみる。心ここにあらず。

(父さん、母さん。憲男は、実は、学校の勉強にはあんまり身が入ってません。別れちゃった(僕のせいです)男のこのことが、今でもとても好きで、好きで、夢中で…。ああ…おとこのこ…。僕も男のこなんですけど…わはは…。でも、まあ、とにかく、夢中で、そんで、溺れて。恋に溺れてます。とかゆって。フ…。溺れる、て。水も無いのに、溺れる、器用なわたし…)

2003年10月21日(火)
 学校が始まる前日に、進藤ちゃんは下宿先に戻ります。家の鍵を開けようとすると、大家さんに声を掛けられて、クリスマスツリーを渡される。部屋の前にドーンと置かれてて通行の邪魔になってたから預かってた、とのこと。進藤ちゃんは、「ああ、立松だな」ってすぐ分かります。ケーキでも買ってきて今更一人でクリスマスでも祝おうかな…、とも思うんだけど、誕生日にタテから送られてきたケーキを一気に食べて胃を壊して以来、ケーキが食べられなくなってたんで、やっぱり止めます。まあそれはそれとして、郵便受けを見てなかったのを思い出して、見に行って、年賀状を手にしたとき、「あ…!」と進藤ちゃんは思う。進藤ちゃんは、タテに年賀状を出してたのでした(住所は田中んち宛てで)。クリスマス前、つまりタテが実家を訪ねて来る前に出したものです。タテが来たことにびっくりして、自分が年賀状出したことを忘れてました。
 一方タテは、学校が始まる日に田中んちに帰ります。
「(ドアが開いた瞬間大声で) あけましておめでとうございました! 今年もよろしくネ!」
「嫌だ。よろしくしたくない」(ドアを閉めようとする)
「キャー!」
「冗談だ」
「新年早々親友にそーゆージョークをかますのね! うれし〜い☆彡」
「元気そうだな」
「田中さんこそ元気そうじゃないですか。ていうかなんかあなたツヤツヤしてません!? …花ちゃんとなんかあった?」
「うっ!」(タテの鋭さにびっくりした)
「うっ、てアンタ」
「はっはっはっ」(朗らかな笑い)
「きもちわるいよ! あーあーついにやっちゃったんだー」
「やっ、…て、お前! そういう下品な言い方はやめないか!」
「ワハハ」
(ああ…花村さんとついに手を繋いでしまった…)←そんだけ
(どうせ手ぇ繋いだくらいなんだろーなー)←当たってるし
「ねえねえ、ラブ話聞かせてよ!」
「断る」(ポーズ付き)
「あっそ」
「えっ!」(ほんとは話を聞いてもらいたかった)
「つーかアンタ学校は」
「…今日は昼からだ」
「のんきでいいわねー。俺、2コマからだから、今から行かないと間に合わない。というわけで、帰って来たばっかだけどもう行くね!」(さっさと荷物用意して行こうとする)
「あっ、待て!」
「も〜帰って来てからゆっくり話聞いてあげるから! 遅刻するじゃん」
「そうじゃなくて!」(タテのコートのポケットにさっと何かを入れる)
「あ、いま人のポッケに何入れたの? ゴミ?」
「違う。ラブレターだ」
「ラブ…、田中ちんからの…? ヤダ〜それ、ゴミよりやだ〜。とかゆって。ぎゃはは」
「お前というやつは…!」
 ポケットに手を入れて取り出そうとするタテを止め、田中は、「後でゆっくり見ろ」と言います。
「あーハイハイ。じゃあいってきまーす!」
「人目につかない場所で見たほうがいいぞ。泣くかもしれないからな」
 そこでタテは、「あ、進藤ちゃんからの手紙かな…?」と思います。
 学校にはチャリで行ってても電車で行っててもなんでもいいんだけど、この日はバスで行きます。座席に座って、タテはすぐに、ポケットから一枚のハガキを取り出します。進藤ちゃんからの年賀状でした。ハガキには、びっしりと字が書かれていて、どんなことが書いてあるのだろう…、と、タテはすっごくドキドキしながら読みます。

『あけましておめでとう。俺は、冬休みに入って帰省して、これを書いています。同窓会以来会ってませんが、元気にしてますか? ちゃんと食べたり寝たりしてますか? 風邪とかひいてない? 立松は寒さに弱いので、色々心配です。何度も電話しようと思ったんだけど、なんか怖くて、できなかった。あ、怖いといえば、こないだ自転車でうろうろしてたら、いきなり猫が飛び出してきて、びっくりして、こけそうになりました。というか、こけた。痛かったっていうか恥ずかしかった。あと全然話変わるんだけど、こないだ偶然高原さんを見かけました。高原さんは何故か走ってて、俺は、「高原さーん!」て呼びながら追いかけたんだけど、全然追いつけないし、気付いてもらえませんでした。ちょっと切なかった。あと、石塚は、最近ヨガにはまってるらしいです。メールでそう言ってた。なんかね、心身が解き放たれて、すごいいいらしいよ。よく分かんないけど。すすめられたんだけど、俺けっこう体かたいから…。グキッとかなったらやばいし。あ、そういや田中は元気? ケンカとかせずに暮らしてる? なんだかんだでお前ら仲良しだから、うらやましいよ。あんまり田中に迷惑かけないように。
あーもう書くスペースが無い。じゃあな。近いうちに会いに行く。

 最後のほうの字がちっちゃいのは書くとこが無くなったからですよ。進藤ちゃんからの年賀状を手に持ったまま、タテは、
(………
 …え? ていうかこれ、クリスマス前に書いて出した? みたいです? ね?
 いや〜それにしても、なんと雑然としたさまよ…!
 こんなまとまりのない文面じゃ、タテノリ泣けませんよーだ)
 とか思うんだけど、涙がぼろぼろ出てくるんです。通路を挟んで隣りの席に座ってた小学校低学年の女の子が、タテに飴を差し出してきます。「これ食べたら涙が止まるよ」って。タテは、「ありがとうございます」と丁寧にお礼を言って、両手で受け取って、これ以上無いくらい慎重な手付きで包みを解いて飴を口の中に入れる。涙が止まるはずの飴玉なのに、余計泣けてくる。飴はほんとに甘くて、タテは、
(ああ、愛こそすべてだ…
 なんちゃって)
 とか思う。そんで、いきなり席を立って、
「運転手さん! ここで降ります! 止めて下さい!」
 と無茶言い出したりする。

 たぶん次のメモが大学生ネタ最終回になると思います。しつこかったけど、もう終わるけんの。


 

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